年 頭 に 当 た っ て

全国中小企業団体中央会
会長 井 上 光 一

 明けましておめでとうございます。
 平成11年の新春を迎えるに当たり、全国の中小企業の皆様並びに中小企業組合関係の皆様に謹んで新年のご挨拶を申し上げます。
 顧みますと、昨年のわが国経済は、戦後初めて2年連続のマイナス成長となり、景気の後退がより深刻化し、企業倒産は件数、負債総額とも戦後最大のレベルに達し、失業率も戦後最悪の水準を記録するなど、中小企業にとっては大変厳しい年でありました。
 本会と致しましては、こうした状況を打開すべく、景気対策をはじめ、貸し渋り対策等について、累次にわたり政府・国会に対し要望陳情活動を展開し、4月には「総合経済対策」が、また、8月には「中小企業等貸し渋り大綱」が策定され、20兆円規模の特別保証制度が創設されるとともに、11月には恒久的減税を含め総額20兆円を大きく上回わる規模の「緊急経済対策」が策定されるなど、大きな成果をあげることができました。
 この間、景気後退や貸し渋り発生の要因の一つとなっていた信用不安や不良債権処理の遅延に対応するための金融システム安定化のための枠組みもでき上がったこともあり、緊急経済対策とともにこれらが奏功し、一部で話に出ている「変化の胎動」が現実のものとなり、一日も早くわが国経済の不透明感が払拭され、この新しい年が明るい将来展望を描ける年となることを心から念願するものであります。
 また、昨年から、中央省庁改革基本法に基づいて新たに設置される省庁が担うべき機能の検討が行われておりますが、その一環として、今後の中小企業政策の基本理念の構築及びそれを踏まえた施策体系、個別政策の抜本的な見直しが開始されており、中小企業組織化政策についても、引き続き見直しが行われることになっております。われわれとしては、こうした動きが、中小企業の実態を反映したものとなるよう積極的に意見を開陳して参りたいと考えております。
 わが国経済社会の構造変化が進行する中で、中小企業が競争力を維持強化し、その発展基盤を強固なものにしていくためには、新技術・新製品の開発、新分野への進出、情報化の推進等を通じて、多様に変化する市場や消費者のニーズに対応した付加価値の高い財・サービスの提供を行うなど、自らの手で個々の企業の経営革新に取り組むことはもちろん、未だ、技術、人材、資金、情報などの経営資源において必ずしも十分とは言い難い状況を克服するため、中小企業組合を中心とする多様な組織をフル活用し、それぞれの課題解決に相応しい連携の輪を創り、様々な制約要因を自主的に解決していくことが強く求められております。
 さらに、近年、環境や安全をめぐる問題などについて、社会的規制が急速に強化されておりますが、中小企業がこのような社会的な要請に円滑に応えていくためには、商工組合を始めとする業種別組織を見直し、これまで以上に活動の幅を広げていくことも必要と思われます。
 私ども全国中小企業団体中央会と致しましては、都道府県中小企業団体中央会並びに全国5万余に上る中小企業団体とさらに連携を深め、組織化推進の中核体として、中小企業組合の育成・強化に一層努めるととともに、中小企業が直面する問題の解決に向けて、積極的な活動を展開し、皆様方のご期待にお応えできるよう懸命の努力を傾ける所存でございます。
 時あたかも本年は、わが国中小企業組合の基本法たる中小企業等協同組合法が誕生してからちょうど50年を数える節目の年でもあります。
 中小企業並びに中小企業組合関係の皆様におかれましては、極めて厳しい情勢下にはありますが、新たな年を迎え、決意を新たに、わが国経済社会の発展と中小企業の振興のためにより一層のご尽力を賜りますようお願い申し上げますとともに、本年が皆様にとって平成不況から脱却するための飛躍の年となりますようご祈念申し上げまして、私の年頭のご挨拶と致します。


平成11年 元旦


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