平成11年度中小企業関係税制改正のあらまし・事業協同組合などの法人税率が3%引き下げられます

 政府は平成11年1月12日、平成11年度税制改正の要綱を閣議決定した。
 現下の厳しい経済情勢等を踏まえ、景気に最大限配慮して、所得税及び法人税について恒久的な減税等を実施することとしている。
 ここでは、中小企業の皆さんに特に関係のある改正部分を抜粋しています。

一.恒久的な減税等
1.所得税
(1) 最高税率の引下げ
  ●現行 適用課税所得
3,000万円超の金額 50%
  ◎改正案 適用課税所得
1,800万円超の金額 37%

2.法人税(平成11年度4月1日以後に開始する事業年度について適用)
(1) 普通法人の税率
  ●現行 34.5%→◎改正案 30%
(2) 中小法人の軽減税率
  ●現行 25% →◎改正案 22%
(3) 公益法人等、協同組合等及び特定の医療法人の軽減税率
  ●現行 25% →◎改正案 22%
(4) 特定の協同組合等の特例税率
  ●現行 30% →◎改正案 36%

(注)上記の法人税率の改正に伴い、法人の清算所得に対する法人税率についても所要の改正を行う

※備考1
 所得税及び法人税の課税の在り方については、税負担の公平の確保、税制の経済に対する中立性の保持及び税制の簡素化の必要性等を踏まえ、今後の我が国の経済の状況等を見極めつつ、我が国の経済社会の構造的な変化、国際化の進展等に対応した個人所得課税及び法人課税の制度を構築する中で、その抜本的な見直しを行うものとする。
※備考2
 連結納税制度については、専門的・実務的な観点から、本格的な分析・検討を行う。


二.土地税制

1.土地税制
(1) 平成11年1月1日から平成12年12月31日までの間に長期所有の土地等を譲渡した場合の譲渡所得については、次により課税する特例措置を講ずる。
  ●現行(特例措置) 特例控除後の譲渡益
6,000万円以下の部分 20%
6,000万円超の部分  25%
  ◎改正案 特別控除後の譲渡益
一律20%
(2) 特定事業者の事業革新の円滑化に関する臨時措置法の認定を受けた者が行う長期所有土地等から一定の減価償却資産への買換え特例について、その適用期限(認定期限)を2年延長する。
(3) 土地に関する登記のうち課税標準が不動産の価額であるものに係る登録免許税の課税標準の特例について、固定資産課税台帳の登録価格に乗じる割合を3分の1(現行100分の40)に引き下げる。

(注)上記の改正は、平成11年4月1日以後に受ける登記に係る登録免許税について適用する。


三.投資促進税制
1. 個人事業者又は法人が、平成11年4月1日から平成12年3月31日までの間に、取得価額100万円未満の特定の情報通信機器を取得した場合には、取得価額の全額の損金算入を認める情報通信機器の即時償却制度を創設する。
2. 中小企業投資促進税制について、適用対象となる貨物自動車の範囲を拡充した上、中小企業者等が平成12年5月31日までの間に一定の機械装置、器具備品、貨物自動車又は内航船舶を取得し、製造業、建設業等の用に供した場合には、取得価額の100分の7の特別税額控除又は取得価額の100分の30の特別償却の選択適用(リース資産についても特別税額控除を適用)を認める。
3. 中小企業技術基盤強化税制について、平成12年3月31日までの間に開始する事業年度(平成12年分まで)については特別税額控除割合を100分の10とした上、その適用期限を2年延長する。

(注)平成12年4月1日から平成13年3月31日までの間に開始する事業年度(平成13年分)については特別税額控除割合は100分の6とする。


四.金融関係税制

1.有価証券取引税及び取引所税の廃止等
(1) 有価証券取引税は、平成11年3月31日をもって廃止する。
(2) 取引所税は、平成11年3月31日をもって廃止する。
(3) 上場株式等に係る譲渡所得税の源泉分離選択課税制度については、平成13年3月31日まで適用する経過措置を講じた上、廃止する。
2. 特定金融機関等の源泉徴収免除制度及び公共法人等の利子非課税制度について、対象となる国債利子の範囲から個別登録国債の利子を除外する。

(注)上記の改正は、平成13年1月1日以後にその計算期間が開始する利子について適用する。


五.社会経済情勢の変化への対応

1.新たな事業活動の促進
(1) 新事業創出促進法の制定に関連して、次の措置を講ずる。
  設立後5年以内の法人である中小企業者の欠損金額について、前1年間の繰戻し還付を認める。
  新事業創出促進法の中核的支援機関である公益法人の特定の業務に係る基金に充てるための負担金について、損金算入を認める。
  高度技術産業集積地域内において、高度技術工業を営む法人が取得等をする機械装置及び建物等について、一定の要件の下に、取得価額の100分の15(建物等は100分の8)と特別償却を認める。
  新事業創出促進法の中核的支援機関が、平成11年4月1日から平成13年3月31日までの間に、同法に規定する基本構想に定められた合併等により不動産を取得した場合の所有権の移転登記に対する登録免許税の税率を1,000分の3(本則1,000分の6)に軽減する措置を創設する。
  新事業創出促進法の規定により特定事業者の事業革新の円滑化に関する臨時措置法の承認とみなされた承認に係る登記に対する登録免許税について、同法に係る承認の場合と同様の軽減措置を認める。
(2) 事業化設備等を取得した場合等の特別償却又は特別税額控除制度について、その適用期限を2年延長する。
(3) 中小企業の創造的事業活動の促進に関する臨時措置法の認定研究開発等事業計画を実施する中小企業者など特定の中小企業者に係る欠損金の繰越期間の特例制度の適用期限を2年延長する。

2.研究開発及び情報化の促進
(1) 増加試験研究費の特別税額控除制度を次のように改組した上、その適用期限を2年延長する。なお、基盤技術研究開発促進税制、特別試験研究促進税制、特定試験研究会社に係る特例及び特定事業者の事業革新の円滑化に関する臨時措置法に係る特例は廃止する。
  比較試験研究費の額を過去5年間の各期の試験研究費の額のうち多い方から3期分の平均額とし、当期の試験研究費の額が比較試験研究費の額を超える場合(当期の試験研究費の額が、前期及び前々期の試験研究費の額を超える場合に限る。)には、その超える部分の金額の100分の15相当額の特別税額控除を認める。
  特別税額控除限度額は、当期の税額の100分の12相当額(特別試験研究費の額がある場合には、その支出額の100分の15相当額を加算することとし、当期の税額の100分の14相当額を限度とする。)とする。
(2) プログラム等準備金制度について、次の見直しを行った上、その適用期限を2年延長する。
  汎用プログラムのうち制御プログラムの開発費用に係る準備金について、その積立率(現行100分の10)を100分の13(収入金額50億円超の部分については100分の5)とする。
  汎用プログラムのうち制御プログラム以外のものの開発費用に係る準備金について、その積立率(現行100分の20)を100分の23(収入金額100億円超の部分については100分の15)とする。
  情報処理システムの企画等に要する費用に係る準備金及びデータベースの構成に要する費用に係る準備金について、その積立率を100分の9(現行100分の10)に引き下げる。
  統合情報処理システムサービスの補修費用に係る準備金について、積立限度額の計算基礎となる収入金額の上限を100億円とする。

3.企業組織の変更への対応
(1) 商法改正による株式交換・株式移転制度(仮称)の創設に伴い、次の措置を講ずる。
  株式交換又は株式移転が行われた場合において、その株式交換又は株式移転により子会社となる会社の株式の親会社となる会社における受入価額が株主の帳簿価額の合計額以下であると認められること等の要件を満たすときには、子会社株式の取得価額の引継ぎによる課税の繰延べを認める。
  株式移転により子会社となる会社(新子会社)が親会社となる会社(新親会社)に対してその株式移転後に譲渡する全額出資の子会社の株式について、新親会社が新子会社の譲渡直前の帳簿価額を取得価額とすること等の要件を満たすときには、譲渡益に対する課税を行わない。
(2) 特定事業者の事業革新の円滑化に関する臨時措置法に基づき共同で事業革新計画の承認を受けた特定事業者が、共同出資子会社を設立する際に現物出資をした場合に生ずる譲渡益について、一定の要件の下に、課税の繰延べを認める措置を講ずる。

4.特別法人税の課税停止
 退職年金等積立金に対する法人税(特別法人税)について、2年間臨時的に、課税しないこととする措置を講ずる。

5.その他
(1) 中小企業経営革新支援法(仮称)の制定に伴い、次の措置を講ずる。なお、同法の制定に伴い、中小企業近代化促進法及び特定中小企業者の新分野進出等による経済の構造的変化への適応の円滑化に関する臨時措置法に関連する特別措置は、所要の経過措置を講じた上、廃止する。
  経営革新計画(仮称)に従って中小企業者が取得する一定の機械装置について、取得価額の100分の7の特別税額控除又は取得価額の100分の30の特別償却の選択適用(リース資産についても特別税額控除を適用)を認める。
  緊急・特別支援計画(仮称)の承認を受けた商工組合等の構成員である中小企業者が所有する機械装置について、5年間普通償却限度額の100分の27の割増償却を認める。
  経営革新計画(仮称)又は緊急・特別支援計画(仮称)の承認を受けた商工組合等が構成員に賦課する負担金について特別償却を認め、増加試験研究費の特別税額控除制度の対象に加えるとともに、商工組合等が負担金により取得する試験研究用資産について圧縮記帳を認める。
  経営革新計画(仮称)の承認を受けた中小企業者の欠損金額について、前1年間の繰戻し還付を認める。


六.その他の租税特別措置の改正

 租税特別措置について、所要の経過措置を講じた上、次の措置を講ずる。
1.廃止
次に掲げる特別措置を廃止する。
(1) 中小企業構造改善計画を実施する商工組合等の構成員の機械等の割増償却
(2) 繊維産業構造改善事業計画等を実施する特定組合等の構成員の機械等の割増償却

2.縮減等
(1) 税額控除等
  エネルギー受給構造改革推進投資促進税制について、特別税額控除の適用を中小企業者等に限ることとするほか、基準取得価額の見直しを行う。
  中小企業等基盤強化税制について、次の見直しを行った上、その適用期限を2年延長する。
    イ 中小企業等関係立法に係る取得分の特別税額控除の適用対象を個人事業者、資本金3,000万円以下の法人及び農業協同組合等に限ることとする。
ロ 卸売業、小売業又は飲食店業を営む法人の対象設備の範囲の見直しを行う。
ハ リース税額控除の対象設備のリース費用総額要件を、機械装置にあっては370万円以上(現行320万円以上)に、器具備品にあっては160万円以上(現行140万円以上)にそれぞれ引き上げる。
(2) 特別償却
  事業革新設備及び技術新設備の特別償却制度について、事業革新設備の特例償却につき、償却割合を100分の18(現行100分の25)に引き下げるとともに対象設備の見直しを行った上、その適用期限を2年延長する。
  商業施設等の特別償却制度について、適用対象に中心市街地における市街地の整備改善及び商業等の活性化の一体的推進に関する法律に基づく中心市街地食品流通円滑化事業に係る商業施設等を追加するとともに、食品流通構造改善促進法に係る措置の対象施設の範囲の見直しを行った上、その適用期限を2年延長する。
(3) 準備金等
  特定の基金に対する負担金等の損金算入の特例制度について、適用対象から伝統工芸品産業の振興に資する業務及び電機通信基盤充実臨時措置法の人材研修事業に関する業務に充てるための負担金を除外する。

3.適用期限の延長
(1) 交際費等の損金不算入制度の適用期限を2年延長する。
(2) 次に掲げる特例措置の適用期限を2年延長する。
  中小企業者等の機械の特別償却
  障害者を雇用する場合の機械等の割増償却
  電子計算機買戻損失準備金
  商工組合中央金庫、信用保証協会、農業信用基金協会等の抵当権の設定登記に対する登録免許税の税率の軽減
  株式分割等に係る株券に対する印紙税の非課税


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