☆活路開拓ビジョン調査事業へ取り組み
こうした業界の悩みに大きなきっかけとなったのが中央会の存在であった。協同組合を設立した翌年の平成8年、中央会の補助事業=活路開拓ビジョン調査事業を活用し、この年間を通じて研究した成果で共同配送に対する組合員の意識が飛躍的に高まったといってよい。特に先進組合として視察した福島市の水産物卸協同組合では、「市場の持つ機能に対し時代はより高度なものへと変化を求めてきている。少量多品種、多頻度配送、温度管理の徹底なども一つの時代の流れである。困難ではあるがこれらに応えることが自分達に課せられた使命であり、組合員一致協力して共同配送事業に取り組んだ」話を聞き、覚悟を決めたという。
☆よいことは続くもの
活路開拓調査事業も単年度の補助事業であることから補助金も1年で終わりであり、組合としては自前の予算を措置し実施へ向けての研究をしていたところ、この調査事業の報告書があることで農水省の目に触れ、同省食品流通局から生鮮食品の物流最適化を支援する平成10年度の新規事業「生鮮ロジスティクス構築モデル事業」のモデル市場(全国で3カ所)に指定されることになる。この農水省の補助金を受け、委員会の開催はもちろん、各種の調査も精力的に実施、この1月からは実証実験事業も終え、この4月からはいよいよ共同配送事業を実施するに至った。
☆共同配送事業の内容
とりあえず10路線を本格的に運行し、量販店・ホテル・仕出し屋といったお客様は300を超えている。
しかし混載を嫌うお客さんや納品時間がほとんど同じ時間帯に集中すること、又配送は運送業者に委託して実施しているが、早朝7時に出発する配送はそのほとんどがお昼頃で終わるため、運送会社としては午後の稼働の問題など想定されていたとはいえ、今後の課題も多い。しかし自己保有車輌や運転手の減員など組合員企業にとっては目に見える形で経済的メリットも出始めており、今後の展開に期待は大きい。
☆終わりに
共同配送事業に参加している組合員もまだ半数ぐらいであるが、取材をして困難な中にもスタートに踏み切った佐藤理事長はじめ参加組合員の熱意に熱く心を打たれた。共同配送事業は経営上の問題ではあるが、一面ではむしろ環境や公害、都市交通の問題といった社会問題といってもいい。そのためには商品の送り手・受け手、さらには一般消費者の理解や行政の支援も大切と言えよう。忙しい中、快く取材に協力してくれた佐藤理事長さん、住田専務理事さんに心から感謝申し上げると共に、組合の共同配送事業の隆盛を願ってやまない。
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