多様で活力ある独立した中小企業者の育成・発展を 中小企業政策審議会答申(抜粋)

 中小企業政策審議会は、このほど21世紀に向けた新たな中小企業施策の在り方について答申を取りまとめた。
 答申によれば、新たな政策の柱として(1)経営革新や創業に向けての自助努力支援、(2)競争条件の整備、(3)セイフティネットの整備をあげ、多様で活力ある独立した中小企業者の育成・発展を目標とするとしている。


 21世紀に向けた新たな政策の目標

多様で活力ある独立した中小企業者の育成・発展
〈中小企業の多様性・創造性の発揮〉


 新たな中小企業像

機動性、柔軟性、創造性を発揮する「わが国経済のダイナミズムの源泉」

【中小企業に期待される役割】
(1)市場競争の苗床(市場競争の活性化、経済の新陳代謝の促進)
(2)イノベーションの担い手(革新的な技術、新業態等の創出)
(3)就業機会創出の担い手(地域の産業集積、商業集積の中核)
(4)地域経済発展の担い手(地域の産業集積、商業集積の中核)


 新たな政策の柱

1、経営革新や創業に向けての自助努力支援
意欲ある中小企業者の創業や成長、経営の革新へ向けての自助努力を積極的に支援する。

2、競争条件の整備
市場機能の不十分な面を補完し、資金、人材、技術、情報等の経営資源へのアクセスの円滑化、公正な競争条件の確保を図る。

3、セイフティネットの整備
環境の激変による影響を緩和して、事業者の変化への円滑な対応を促進するとともに、市場での敗者に対する再挑戦の機会を提供する仕組みの整備を図る。

〈小規模企業についての配慮〉
 小規模企業は個人の創造性発揮に適した企業形態であり、身近な起業の機会を提供。前述の政策目標に沿って施策を講ずるにあたっては、小規模企業の経営基盤、経営形態に適切な考慮を払い、その多様で活力ある発展を図る。


 環境変化

(1)開業率と廃業率の逆転(企業数の「過多」→創業の重要性の高まり)
(2)わが国全体の所得向上に伴う「格差」の質的変化(結果の平等を指向→創業・成長の機会の確保)
(3)中小企業の多様性の増大(中小企業の機動性・柔軟性は利点へ)


 新たな施策の方向性

1、経営革新や創業に向けての自助努力支援

(1)経営革新の促進
 業種別組合等に対する設備の近代化を中心とした従来施策の有効性は低減。個々の中小企業者が取り組む「自立型専門中小企業」に向けた経営革新を、多様な連携組織も含め多面的に支援

●支援対象:設備導入支援中心→多様な経営課題に対する支援(研究開発、人材育成等)
●支援対象組織形態:業種別組合中心→個別企業、任意グループ、新たなニーズに対応した組合等多様な連携組織を支援対象の中核へ
●高度化融資制度:集団化等のスケールメリットの追求→経営革新を行う中小企業の支援への重点化

(2)ベンチャー支援
 独創的技術の事業化や新業態の開発を行う企業など、ベンチャー企業が多数出現するような環境を整備し、その自助努力を適切に支援

●リスクマネー供給
●ベンチャー企業支援インフラの整備
●技術開発とその事業化の促進

(3)創業の支援
 現行基本法では「創業」に関する規定無し中小企業施策の重点課題として、創業しやすい環境の整備に向け、政策資源配分を重点化

●創業資金の円滑な供給
・物的担保、信用力に乏しい創業企業の特性を踏まえた資金調達の円滑化
●創業インフラ整備
・創業支援施策の周知に向けた関係機関のネットワーク整備。起業家対象のセミナー、研修の充実
●起業家精神の涵養と環境整備
・大学等の起業家育成コースや社会人再教育コースの充実・強化

(4)商業・サービス業の経営刷新
 商業・サービス業の業種特性を踏まえ、その経営革新を適切に支援。特に、中小小売業については、集積内産業としての特性を考慮し、商業集積の組織力の再構築と新陳代謝促進のための方策を検討

●競争的商店街支援への重点化
●個別小売業者等に対する支援
●製・配・販の連携強化によるリテールサポート等卸機能の確信支援

2、競争条件の整備

(1)資金供給の円滑化と自己資本の充実
 公的金融制度については、民業補完を基本に、創業や経営革新に係わる多様化する資金ニーズへの対応と、セイフティネット機能を強化。また資金調達手段の多様化のための社債発行の円滑化など、直接金融へのアクセス円滑化のための環境整備を推進
 中小企業税制については、事業環境整備、政策誘導の観点から特別措置を講じ、その経営基盤の安定や新事業進出を促進

(2)ソフトな経営資源の充実強化
 経営の革新や創業等に必要な経営ノウハウ、技術、情報等ソフトな経営資源の充実強化を図るため、行政自らが「指導」を行う役割を縮小し、市場機能・民間能力を活用した「支援」事業へ転換

(3)経営資源の相互補完に向けた連携の促進
 任意グループ等企業間の緩やかな連携、組合、共同出資会社等多様な組織形態を通じ、中小企業の経営資源の相互補完を推進柔軟な組織再編を可能とするため、組合制度については、事業の「成長」の視点を導入し、その弾力化を図る

(4)人的資源の充実
人的資源の充実に向け、労働市場の整備、労働移動の円滑化等、その環境整備を進めるとともに、人材育成・能力開発を推進

(5)取引の適正化と受注機会の確保
商工組合カルテル等、行政が直接市場に介入する施策の廃止・縮小

3、セイフティネットの整備
 事業者のリスクマネジメントを基本に、経済的環境等の急激な変化に対する緊急避難措置の整備による変化への対応促進と、市場での敗者に対する再挑戦の機会を提供する仕組みの整備
(1)経済環境の著しい変化に対する時限的な緊急避難措置
 ・貸し渋り対策等の金融支援措置
 ・経営基盤強化のための措置等
 ・事業分野調整施策→予見可能性、透明性確保の観点等から制度のあり方を検討
(2)リスクに係わる保険的システムの整備(セイフティネットとしての小規模企業共済、倒産防止共済制度、グローバルな事業活動に係わる海外投資保険等)
(3)倒産法制の整備(使いやすい簡素・迅速な新再建型手続きの創設と失敗した者の再挑戦の容易化)


 中小企業者の範囲の見直しの方向

工業・鉱業等 300人 (300人)  3億円 ( 1億円)
卸売業    100人 (100人)  1億円 (3千万円)
小売業     50人 ( 50人) 5千万円 (1千万円)
サービス業  100人 ( 50人) 5千万円 (1千万円)

※注:( )内は現行定義。昨年6月に貸し渋り対策の一環として、金融関係4法については卸売業の資本金基準を7千万円、小売・サービス業の資本金基準を5千万円に緊急的に改正している。


 政策の実施

(1)政策評価の充実と施策の利便性向上
 ●政策評価手法の確立と積極的導入。
 ●受益者負担の適切な導入(施策利用者による評価・選別を通じ提供サービスの質の向上)。
 ●施策の大括り化、手続きの簡素化。

(2)中小企業団体の機能強化
 ●機能別予算化による団体間の健全な競争の促進、支援担当者の資質の向上。
 ●商工会:広域的な事業や合併等の推進を検討。
 ●中小企業団体中央会:連携支援期間としての専門性向上。

(3)民間能力の活用
 ●適切な能力を有する場合には民間企業や任意グループを積極的に活用。

(4)地方との役割分担(地方公共団体の位置づけ)
 ●国の施策に準じて施策を講じる主体→国の施策の選択と、地域の特性・実情に応じた施策展開の主体。



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