企業・産業の高付加価値化に向けて 〜事例にみる中央会の連携支援活動〜 |
はじめに 県内のグラフィックデザイナー、イラストレーター、アートデレクター、コピーライター、カメラマン、イベントプロデューサーなどデザインに関係する人たちのグループ(名称:あきたデザインネットワーク=佐々木孝代表幹事)が昨年11月に発足しました。 幹事の1人、バウハウス社長森川恒さんは「これまで県内にはデザイナーといわれる人が何人いるのか、又、誰がどこでどんな仕事をしているのか互いによくわからないといった現状から抜け出し、今後1年間で会のあり方を探る一方産業界に提案型の仕事を生み出していきたい」と話している。 本会ではこれまでの組合を中心とした組織化の推進を重点としながらも、中小企業の新しいニーズに対応するため今年度から企業交流課を新設、企業間交流・連携等への支援を重点目標として活動を展開してきたところですが、こうした中で県内のデザイン関係者によるグループ・一つの核組織が誕生したことの意義は大きい。以下、本会の新しい事業展開と「あきたデザインネットワーク」誕生の経緯をご紹介します。 |
「あきたデザインネットワーク」の誕生経緯と今後の方向 |
昨年一昨年と2カ年にわたり本会では秋田市において「ニュービジネスプラザ」を開催した。これからの企業経営には製品の高付加価値化や経営合理化が大きな課題。そして又これらの企業活動をサポートするデザイン業や情報サービス業の存在は今や不可欠と言える。しかし、県内のこれらの業種は業歴が比較的浅く、このため県内産業を支えるニュービジネスのPR、同業種・異業種の情報交換、ネットワークの形成が急がれており、特に製品展示は経営者、消費者等に対し、ニュービジネスに対する理解と関心を深めてもらおうと実施したもの。 こんな中、デザイナー業界の中には自分達の仕事に対する社会の認知度や対価について不満も大きく内在しており、一昨年のイベント後こうした業界と中央会との接触を発端として「不満の言いあいから、とにかく前に進もう」と言う話が出てくるようになっていた。 以来、数回の話し合いを続けた結果本会としても11年度事業としてこの動きを取り上げ、全面的に支援していくことになった。 具体的には11年6月から有志による発起人会を精力的に開催、この間すでにグループを立ち上げている隣県山形県の事例や活動なども研究、11月19日に発足会を開催し正式に活動をスタートした。 |
組織の特徴と活動のユニークさ |
グループを立ち上げるとき会員資格は原則“個人"としていわゆるデザインの属性にこだわることにした。又、それぞれのタテとヨコの壁を超え、自由に集い、相互の交流と信頼を深めるということで組織の形態は任意のグループとし、会則も無い。活動についても約束事として2ヶ月に1回の割合でテーマを設け、交流会(ナイトセッション)を実施するということとデザイナーズリスト(データベース化)の作成の二つとなっており、極めて自由でシンプルなのが特徴となっている。 |
県等の支援策
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デザイン業界のこうした動きと連動するように県でも業界の支援策が検討されている。 最近は“もの"を売るためにはデザインや宣伝方法が大きな要素になっていると言われている。「特に秋田県は素材には大変に恵まれていながら、これを県外に売り出すための手法については決して上手だったとは言えない(森川幹事談)」という指摘もあり、県当局でも県内企業のデザインマインドを向上させ、デザインを取り込んだ製品作りを促進させる必要を痛感していた。 こうした状況からネットワークの誕生を契機に、県でも早速具体的な支援策の検討に入り、この4月にオープンする産業振興プラザ3F(県庁第2庁舎)に「デザインサポート室」を確保し、パソコン等でイメージしたシュミレーションができるようなスペースを確保し、さらにはデザインセミナーの開催費や“秋田ブランドの形成"に対して積極的に支援策を講じていくことを決定している。 |
連携事業の第1号は
“PBブランド日本酒ラベル制作" |
活動を開始して間もなく、思わぬ初仕事が舞い込んだ。能代市の酒店有志13人のグループ(=能代の風を販売する会)が新たにオリジナル純米酒の販売を始めることとし、PBブランド酒(「ロマンと物語性」を織り込んだ「能代人のルーツを探る酒」)のラベルデザインを相談された本会が、早速仲立ちに入ったもの。 デザインネットワークでは参加自由のコンペ形式でこれを引き受けることとし、グラフィックデザイナーとカメラマンやイラストレーターの組み合わせなど7組10人がエントリーし、この程採用作品が決定した。 このようにデザインネットワークは県内デザイナーに緩やかな連携と能力の向上、産業界との結びつきの強化などを設立目的としており、会員同士の共同作業の活発化をもくろんでいただけに、「今回の事業が産業界との連携強化に大きな弾みとなった(森川幹事談)」と話している。 |
中央会の今後の活動
〜緩やかな連携による活動を積極的に支援〜 |
意欲的な数人のメンバーからはじまったこのネットワークは現在会員数が200人を超える組織となった。一人ひとりの背景を考えると千人を超える組織になる(森川幹事談)とも言われている。最近はNPOといった組織やボランティア活動なども大きく注目され、社会の流れやフレームも変わりつつあります。 中央会は今まで組合作りの専門集団とのイメージが強かったものの、これまでの組合指導や多角的連携支援の中で培ってきた知識・経験・ノウハウや連携組織との繋がりも大きな資産として蓄積しており、これらを最大限活用した新たな連携支援を企業へのタイムリーな情報の提供及び企業間の出会いの場を設けるなど今後さらに積極的に展開していくこととしています。 なお、このネットワークが新聞に掲載されて以 来、事務局としての中央会には記事を見たというAターン希望者から就職の相談が数件寄せられており、若い優秀なデザイナーが故郷へ職場を求めた場合の一つの接点としての役割も期待されています。 |
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