1.エンジェル税制の拡充
エンジェル税制を改革し、現行の損失についての特例措置(翌年以降3年間繰り越して他の株式譲渡益と通算)に加えて、投資対象企業の株式公開に伴う譲渡益を1/4に圧縮することで税負担を軽減(譲渡益の3/4が非課税)し、ベンチャー企業への投資環境を整備します。
【新税制の特徴】
○個人が投資したベンチャー企業の株式※について、株式公開後1年以内に売却した場合に譲渡益を1/4まで圧縮します。(米国の類似スキームでも圧縮幅は1/2)
※2000年4月から2005年3月までに取得し、公開前3年超保有のもの。
○現行エンジェル税制の株式譲渡損失に係る特例措置との選択適用が可能。この結果、損失・利益のいずれが生じた場合でも優遇措置の利用ができます。
【対象となる企業】
設立10年以内の中小・ベンチャー企業(未登録・未上場の株式会社)
〜エンジェル税制〜
エンジェル税制は、ベンチャー企業の創出・育成を図るために、個人投資家(エンジェル)から創業期のベンチャー企業(未登録・未上場の株式会社等の要件有り)への投資を促進するための優遇税制で、我が国では平成9年度に創設されたものです。
それ以前は、個人投資家が株式投資で損失を生じた場合に、その年度の株式譲渡益とは相殺できましたが、翌年度に繰り越すことはできませんでした。また、投資した会社が解散した場合には、何ら手当がなかったのです。エンジェル税制では、この損失を3年間繰り越し控除できることにし、平成12年度からはこれがさらに上記のとおりに拡充されます。
エンジェルには、天使、守護神などのほか事業への出資者、後援者等の意味があります。創業時の資金不足、資金繰りに苦労するベンチャー企業にとっては、実際に資金を提供する投資家は「天使」に見えることから「エンジェル」と言われています。
アメリカでは、金銭的支援のみならず経営ノウハウなどの支援も行い、ベンチャー企業の成長に大きな役割を果たしています。投資家は、主に出資の形で投資を行い、将来その企業が成長して株式を公開すれば大きな利益を得られます。
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2.留保金課税の抜本改革
中小・ベンチャー企業の自己資本の充実を妨げ、成長の足枷となってきた留保金課税を(1)創業10年以内の中小企業(2)新事業創出促進法の認定ベンチャー企業について適用を停止します。
(抜本改革は昭和36年の創設以来初)
3.青色申告特別控除制度の拡充
青色申告制度の充実を図るために、青色申告特別控除額45万を55万に引上げます。
4.事業承継税制改革
取引相場のない株式の評価方法を改正し、さらに延納利子税を引き下げます。
(1)取引相場のない株式の評価方法の見直し
1) 株価算定方法の改正
(「収益要因」の重視による「資産要因」のウェイトを引下げます)
2) 減額率の引上げ
(現 行) 一 律 0.7
↓
(改正後) 大会社:0.7 中会社:0.6
小会社:0.5
☆以上により、株式の評価額は従来に比べ、20〜40%低下します。
(2)相続税延納の際の利子税が次のとおり引下げられます。
〜事業承継税制の改正〜
中小企業の事業承継税制(相続に関する税)は今年度、事業用宅地等の減額面積が200平方メートルから330平方メートルに引き上げられました。残る問題は株式の評価。上場企業の株式評価は取引相場で決まりますが、中小同族会社の株式はその会社が解散した場合の価値によって1株の評価をし、相続税を課税します。具体的には、類似業種の株価、その会社の純資産などから算定されます。
この評価方法が、実に28年ぶりに改正されて平成12年度から、従来に比べ20%から40%低下します。また、相続税を延納する場合の利子税の引き下げも実施されます。
相続税率そのものの引き下げは今回見送られ、所得課税の見直しと併せ早急に結論を出すことになりました。中央会としては長い間運動してきた成果ではありますが、今後とも、生前相続特例制度の創設などの運動を展開していきます。
今回の見直しでは、次世代への円滑な承継が事業者の経営意欲を高めるという意見がある一方で、自ら起業する者との機会均等を欠くのではないかという意見もありました。また、起業と事業の承継を税制面だけとらえて議論することには異論のあるところですが、この問題についてなによりも説得材料となるのは具体的な事例です。事業承継に関する適当な事例がありましたらお知らせください。
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