中小企業のためのM&A 〜企業の発展と存続を目指して〜 日本M&Aセンターグループ本部
株式会社日本マージャーアンドアクイジションセンター 代表取締役 分林 靖博 氏 |
新聞紙面などを賑わしている“M&A”のニュースは大手企業のものが中心であるため、M&Aは中小企業とは無縁のものと思われがちですが、実際、昨年1年間の日本でのM&Aの件数は約1,200件(新聞発表)。このうち、60%は実は中小企業に関するものです。 M&Aは単なる「合併」、「買収」の略語の意味ではなく、「企業の発展と存続のための経営戦略の手段」と捉えて、企業の経営規模に関係なく、経営者の関心が非常に高まっております。 本会では、中小企業の経営者の方々に「M&Aとは何か?」を知っていただくことによって、多くの経営課題の解決や「企業の存続と発展」の糸口となることを期待して、中小企業のためのM&Aセミナーを開催しました。 今回は、日本M&Aセンターグループ代表・分林氏の講演要旨についてご紹介します。 |
◎経営者の4つの選択 創業し、苦労して大きくしてきた会社。世代交代期にさしかかったときにその会社をどうするのか。 創業を『入口』とするならば、『出口』は次の四つで、そのうちどれを選ぶかは、非常に重要なポイントとなってきます。 (1)親族又は社員に後を任せる
中小企業の事業の承継は、従来は子息を中心とした親族の承継が大半を占めていましたが、ここ数年豊かな社会と経済環境の変化により、子供が好きな仕事を選択する時代となり、後継者難の時代となってきています。 親族が継がない場合、社内からの登用ができないかを考えますが、株式の評価が億単位となっているような場合、社員は株式を時価で買えるだけの資力は持っていませんし、また会社や社長個人の借入保証を付け替える等は非常に難しい状況にあります。 (2)株式を上場・公開する
最も理想的な選択肢は、この株式上場・公開です。 株式を公開して資本と経営を分離することです。 つまり、株式を公開して創業者利潤をとり、将来しかるべき経営者を迎えるというやり方です。 しかし、いくら公開したいと思っていてもすべての会社が公開できるわけではありません。 新規に株式を公開できる企業は年間100社前後です。しかも、売上、利益、発行済株式数、社内組織、将来の予測等非常に審査が厳しいのが実態です。 (3)会社を廃業して清算する
後継者がいなく、公開することも難しい場合、会社を廃業することを頭に浮かべる方もおられると思います。 会社を廃業するということは、これまで人生の大半をかけてきた会社が消滅してしまうことです。 従業員も解雇しなければなりませんし、その家族の生活をどうするのか、また、これまで支援してくれた取引先や仕入先などにも重大な影響を及ぼすことになります。 ●企業の成長 次に、清算した場合とM&Aした場合を検証してみましょう。 |
◎清算した場合とM&Aの場合の比較 【X社を廃業、清算したら・・・】
X社は、東京で古くから金属部品加工を行っていたメーカーです。年商は5億ほどですが、30年ほど前から所有していた1500坪余りの工場があり、時価総資産では17億円ほどになっていました。 それでは、この会社が清算した場合をシュミレーションしてみましょう。 X社の資産の内訳は工場用の土地が12億円(簿価2億円)、その他の資産が5億円、負債としては金融機関からの借入金を含め6億円ありました。 仮に、土地を時価の12億円で売却、在庫や機械設備などその他の資産も簿価と同額の5億円で処分したとして、負債の6億円を差引後の残余財産は、11億円です。そこから資本金1000万円と剰余金9000万円を差し引くと、課税対象となる清算所得は10億円となります。 清算所得は会社に入る所得ですから、それに法人税や事業所得税がかかります。税率を40%とすると4億円です。したがって、税金4億円を差し引いた残余財産は7億円となります。 社長が100%の株式を持っていたため、この7億円が会社の分配金になりますが、さらに社長個人に配当所得に対する税金がかかります。清算分配金の7億円から資本金の1000万円を差し引いた6億9000万円に約45%の税金がかかるとすると税額は約3億1000万円。結局、差し引き手取額は約3億9000万円になってしまいます。 【X社をM&Aしたら・・・】
それでは、X社を株式譲渡によるM&Aで会社を売却する場合はどうなるでしょうか。 時価純資産額11億円、これを株式の売却価格とします。この11億円の株式を譲渡して得た売却益から資本金1000万円(株式取得原価)を引いた10億9000万円に対してかかる税金は現在の税制では26%の分離課税ですみます。株式売却益に対する税額が2億8340万円ですから、手取額は11億円から2億8340万円を差し引いた8億1160万円です。 清算する場合の手取額は約3億9000万円ですから、その差は実に4億2600万円以上にのぼります。しかも、M&Aでは通常営業権を加算することが通例となっていますから、実際にはさらに差が大きくなる可能性があります。 このように、清算の場合は資産を処分する段階で法人税がかかり、さらに個人に対して所得税などの二重の税金がかかってくるため、手取額の差が非常に大きくなってくるのです。 結局、X社はM&Aで事業を売却することで、廃業・清算する場合と比較して約2倍以上の手取額を得ることができました。 ●清算と株式譲渡の手取額 |
【説例:貸借対照表】(単位:百万円)
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◎M&Aのメリット M&Aは会社を売る側、買う側、それぞれの従業員等、誰もがハッピーになることができるものです。 ▼売り手にとってのメリット
1.創業者利潤を獲得できます
廃業・清算に比較して、株主の手取額は2〜3倍になります。
2.後継者問題を解決できます
買い手企業が社長を派遣したり、資産・債務を引き継ぐので安心してリタイアできます。
3.相続対策になります
納税資金の調達ができ、また、過半数の株式を1社に譲渡した場合、残りの株式の相続税評価額は大きく下がります。
4.従業員・取引先への影響が少ない
従業員の雇用は継続され、かつ取引先への影響もほとんどありません。
5.株式公開・上場のステップになります
有力企業の傘下に入り、単独或いは他のグループ企業と合併し、公開することも可能となります。 ▼買い手のメリット
1.時間を買うことができます
新しい分野にゼロから立ち上げするよりも、技術・人材などを一括して入手でき、リスクも少なくて済みます。そして何より、事業を立ち上げる時間と労力を大幅に割愛することができます。
2.ブランドなど無形資産を一括して購入できます
技術・ノウハウやブランドイメージを一挙に、入手することができます。
3.市場の摩擦を避けることができます
既に一定規模の市場を確保している会社をM&Aするため、新規に参入する場合に生じがちなトラブルを避けることができます。
4.市場シェアを拡大することができます
同等の会社をM&Aした場合市場での影響力も高まり、プライスリーダーになることも可能です。
5.規模のメリットを享受できます
同業者をM&Aすることによって規模の拡大が図られ、対外的な信用力が増すだけでなくコストダウンも可能となり、競争力が大きく向上します。 このように買い手にとってもM&Aのメリットは多岐に亘っており、買い手のM&Aは「リスクを避けながら、時間と人材を買い、投資を効率化すること」と言い換えることができるでしょう。 ●M&A事例紹介
◎M&Aの実務手順 実際に、M&Aを考えはじめてから、契約、アフターケアに至るまでどのように進むのか、一連の流れは、個々のケースによって違いはありますが、一般的には次のような流れで交渉を進めていくことになります。 このように、M&A専門会社等への相談から始まり、提携仲介契約の締結によってM&A専門会社等を仲介機関として委託して以降、企業評価→候補先へのアプローチ→買い手側アドバイザリー契約とお見合い→基本合意契約→買収監査、そしていよいよ最終契約を締結することになります。 ここで注意したいのは、いつ、どのような形で役員や社員或いは取引先などへ説明をしたらよいのか、ということです。折角、会社や社員のためにM&Aを行ったのに、情報の開示に失敗したため、社員や取引先に不安を与えて、その後の経営がうまくいかなくなってしまっては元も子もありません。 M&Aに踏み切った社長の意志や買い手の将来的なビジョンを正しく伝え、新社長のもと全社一丸となって新しい発展の道を歩めるようになってこそ、M&Aが成功したということができます。M&Aアドバイザーとよく相談し、適切なディスクロージャーに心がけたいものです。 ●一般的なM&A実務手順 ◎最後に M&Aは買い手にとっては、将来どのような会社に発展させていきたいかという企業戦略です。
(1)新規事業に参入し、経営の多角化を図りたい。
(2)シェア、営業エリアを拡大したい。
(3)人材、ノウハウを獲得したい。
(4)合併し、株式公開したい、等。
(5)ゼロから事業を立ち上げるよりも、速く、安全に事業を拡大する戦略的手段です。
現在の時間のテンポが速い時代には、「自前の努力」+「他力の活用」が企業成功のポイントです。 また、売り手にとっては将来、自社をどのように存続させていきたいかをという戦略となります。 (1)後継者問題を解決したい。
(2)上場会社の傘下に入り、より安定させたい。
(3)合併し、株式公開したい、等。
M&Aが成功すれば、お互いに大きなメリットがありますが、そのためには十分な準備が必要です。 特に、財務・税務・法務とチェックポイントが多岐に亘ります。また、株式評価から始まり、譲渡する方法も株式譲渡・新株引受・営業譲渡・合併等があり、極めて高度なスキルと経験が必要です。 したがって、特に初めてM&Aを実行しようと考える方は、信頼できるM&Aアドバイザーに相談されることをお勧めします。 是非、M&Aで企業の発展と存続を図って下さい。 |
◎M&Aの実務手順 実際に、M&Aを考えはじめてから、契約、アフターケアに至るまでどのように進むのか、一連の流れは、個々のケースによって違いはありますが、一般的には次のような流れで交渉を進めていくことになります。 このように、M&A専門会社等への相談から始まり、提携仲介契約の締結によってM&A専門会社等を仲介機関として委託して以降、企業評価→候補先へのアプローチ→買い手側アドバイザリー契約とお見合い→基本合意契約→買収監査、そしていよいよ最終契約を締結することになります。 ここで注意したいのは、いつ、どのような形で役員や社員或いは取引先などへ説明をしたらよいのか、ということです。折角、会社や社員のためにM&Aを行ったのに、情報の開示に失敗したため、社員や取引先に不安を与えて、その後の経営がうまくいかなくなってしまっては元も子もありません。 M&Aに踏み切った社長の意志や買い手の将来的なビジョンを正しく伝え、新社長のもと全社一丸となって新しい発展の道を歩めるようになってこそ、M&Aが成功したということができます。M&Aアドバイザーとよく相談し、適切なディスクロージャーに心がけたいものです。 ●一般的なM&A実務手順 |
◎最後に M&Aは買い手にとっては、将来どのような会社に発展させていきたいかという企業戦略です。
(1)新規事業に参入し、経営の多角化を図りたい。
(2)シェア、営業エリアを拡大したい。
(3)人材、ノウハウを獲得したい。
(4)合併し、株式公開したい、等。
(5)ゼロから事業を立ち上げるよりも、速く、安全に事業を拡大する戦略的手段です。
現在の時間のテンポが速い時代には、「自前の努力」+「他力の活用」が企業成功のポイントです。 また、売り手にとっては将来、自社をどのように存続させていきたいかをという戦略となります。 (1)後継者問題を解決したい。
(2)上場会社の傘下に入り、より安定させたい。
(3)合併し、株式公開したい、等。
M&Aが成功すれば、お互いに大きなメリットがありますが、そのためには十分な準備が必要です。 特に、財務・税務・法務とチェックポイントが多岐に亘ります。また、株式評価から始まり、譲渡する方法も株式譲渡・新株引受・営業譲渡・合併等があり、極めて高度なスキルと経験が必要です。 したがって、特に初めてM&Aを実行しようと考える方は、信頼できるM&Aアドバイザーに相談されることをお勧めします。 是非、M&Aで企業の発展と存続を図って下さい。 |
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