年頭所感

中小企業庁
長官 中村利雄


 平成13年の新春を迎え、お慶びを申し上げます。
 本年は、戦後日本人が遠い未来と思い、目標としてきた21世紀を迎える節目の年であります。
 中小企業者の皆様におかれましても、心機一転「今年こそは」と事業への意欲を高めておられることと思います。私もその一人でありまして、本年を明るい一年とするために皆様と一緒に努力してまいりたいと考えております。新年のご挨拶とともに、今後の中小企業政策についての私の所感を述べさせていただきます。 
 新世紀の日本経済を考えたとき、中小企業がIT革命にうまく対応していくことが、まず重要であります。インターネットの普及や電子商取引の拡大は、多様で柔軟性の高い中小企業にとって、大きなビジネスチャンスを生み出します。一方で、特に小規模企業を中心にデジタル・デバイドの懸念が指摘されていることも事実であります。このような状況に対処するために、閣議決定された経済構造改革に向けた政府の行動計画において、平成15年度末を目途に中小企業の約半数が、インターネットを活用した電子商取引等を実施できることを目標として、3ヵ年の計画に基づき必要な支援施策を講ずることとしております。また、このたびの補正予算におきましては、経営者向けの実践的なIT研修や、商業・ものづくりの分野における共通基盤の整備等を盛り込んでおり、13年度予算案におきましても、中小企業のIT革命への対応として十分な内容を入れることができたと思っております。
 また、中小企業を取り巻く現下の環境は厳しいものがありますが、特に資金面については決して楽観できない状況であります。そのような中、貸し渋り対策として創設された、いわゆる特別保証制度の期限が本年3月末に到来することを踏まえ、昨秋の国会で中小企業信用保険法等の一部を改正いたしました。無担保保険の限度額を5000万円から8000万円に引き上げるとともに、「そごう」のような大型倒産や三宅島の噴火のような災害等に対応するためにセーフティネット保証の対象範囲の拡大も行いました。中小企業に対する円滑な資金供給については引き続き最大限の努力をしてまいります。
 さて、ここ数年の間に中小企業を取り巻く状況は、大きく変化しております。製造業について見ますと、いわゆるグローバリゼーションの流れの中で、電子機器や家電など、日本がかつて得意といわれていた加工組立型の製造業において、中国をはじめとするアジア諸国の製品輸入が拡大しております。系列とも呼ばれる長期的な取引関係を大切にしてきた我が国においても、インターネットを活用した受発注をはじめ、取引形態が変化しております。また、既存の企業間においても、変化を踏まえた新たな企業間関係を構築することが重要となります。このため、「独立した」中小企業として、経営革新等に努力していただくことが大切であると考えております。
 また、中小小売商業は、従業者数570万人、店舗数195万店舗と日本経済の大きな位置を占めており、その活性化は地域の活性化を超えた経済の活性化に結びつくものであります。商店街の空き店舗対策には引き続き努力してまいりますが、IT革命が進むなかで、仕入れや販売にインターネットを活用するだけでなく、マーチャンダイジングの分野でITをいかに活用し、顧客の購買意欲に応えた品揃えをし、売上げを伸ばしていくかが課題だろうと思っております。そのために、ヴォランタリー・チェーンや卸と小売の連携をIT対応促進という観点から支援してまいります。
 中心市街地の活性化は、まちづくり三法が制定されてから3年目、構想を実行に移し成果を挙げる段階に入ります。まちづくり三法は、地域が自らの判断で決断し、実行する仕組みであります。中小企業庁といたしましては、地域の主体的な努力をいかに支援するかに力を入れたいと思っております。13年度予算案におきましては、TMOが地域の商業関係者の意見を幅広く聞き、的確に事業を遂行できるよう、ひと、情報、資金の各面からの支援策を強化しており、TMO構想策定地域を最大限御支援申し上げたいと思います。
 新世代が活躍できるような事業環境を整備することも重要であります。新しく事業を起こそうとするとき、障害となるのは資金の調達であります。担保が乏しくても成長性が見込まれる企業に対して、リスク対応資金が供給される仕組みを充実させなければなりません。また、事業を承継するときを考えますと、例えばアメリカでは、M&A等の仕組みが活用されており、今後の日本でも中小企業のM&Aをはじめ事業承継を円滑にする仕組みを整備していかなければならないでしょう。
 中小企業政策の目標は独立した中小企業の成長と発展であります。そして、そのための政策対応は、業種や企業の規模が異なれば当然異なります。技術はあるけれども開発資金が足りない、長年続いた事業の後継者が見つからない、親企業との関係を見直して独立した部品メーカーとして成長したい。そうした経営者の悩みにきめ細かに対応できる体制を作り上げることが私ども中小企業行政に与えられた課題だと考えております。このような考え方の下、12年度から経営支援体制の充実に取り組んでおります。経営支援体制は、中小企業総合事業団のセンターを全国8ブロックに設けているほか、各県に中小企業支援センター、県内の地域ごとに約200の地域中小企業支援センターが活動を開始しております。
 これらのセンターは、経営者の悩みにワンストップで応えることを目的としており、各種の相談や情報提供を行うほか、信頼できる専門家の派遣事業を行っており、ぜひ積極的にご活用いただきたいと思います。特に、IT革命への対応につきましては、経営者が自ら何のためにITを使うかを考えることが重要であり、そのためのセミナーや実践的な研修を全国で実施することにしております。また、経営支援体制を充実させるという観点から、インターネットを活用して必要な情報、ノウハウを簡単に手に入れられるように、ポータルサイトの整備、衛生放送を使った番組の提供等を平成13年度予算に盛り込んでおります。
 中小企業は様々な面で変化に直面しております。しかしながら、その変化が新たなチャンスを生み出します。中小企業庁は、意欲あふれる中小企業により大きな活躍の機会を提供する社会を目指し、変化に正面から取り組む中小企業の皆様を全力で支援してまいりたいと考えております。
 本年が中小企業の皆様にとって充実した一年となりますことを祈念しまして、私の新年のご挨拶とさせていただきます。


→目次へ

Copyright 2001 秋田県中小企業団体中央会
URL http://www.chuokai-akita.or.jp/