秋田県・中国東北部商談会に参加して
企業交流課  伊 藤 正 樹

 7月15日(日)〜21日(土)「秋田県・中国東北部商談会」に県内企業7社、秋田県、秋田銀行の方々とともに事務局として同行し、中国黒龍江省、延辺朝鮮族自治州の東北2省を中心に訪問した。
 広大な土地、豊富な資源、膨大な労働力を抱える中国を初めて訪問したが、「中国ってこんなところだった」を見て感じたままに紹介したい。


○黒龍江省ハルビン市にて
 黒龍江省の人口は約3,700万人。北・東側の3,000平方㍍はロシアに接し、南側は吉林省、西側は内蒙古自治区に囲まれている。その首都が人口約960万人のハルビン市である。 街の印象は、煉瓦や石による建物が多いこと。市内はそれなりに高層建築物が多いが、総じて古く、ロシア風の建物があちこちに残り、異国情緒を感じる。
 リンタク(自転車によるタクシー)と埃をかぶったタクシーが往来。道路の真ん中には道を渡りきれなかった人々が立ちすくむ。道ばたにはたくさんの人々が座り込み、路面バスと自転車が市民の足。若者であふれる市内から少しはずれると、何か昔の日本にタイムスリップしたような感覚になる。
 ただ街中は道路工事、建物建設がどんどん行われ、これからの急速な発達を予感させる。2008年北京オリンピックの波及経済効果への期待も大きいようである。
 道路工事や建設手法はかなり人海戦術に頼るところが大きいようである。とにかく作業員の多さに驚く。日本では考えられない数の労働者達であふれている。
 中国農村部からの出稼ぎ労働者は全国で推定6,000万人と言われているが、その一端を垣間見た感じである。
 住居はおおよそ8Fまでの集合住宅が多い。ほとんどが国、企業で準備する住宅であるが、最近は民間のアパートが増えてきているそうである。


▽黒龍江省商談会の風景
 現地から30社程の企業が参加。県内企業6社との商談が行われた。各社商談企業数はまちまちで、多い企業では1社当たり20分ほどとかなり厳しい時間での商談となった。
 こちらで欲しい商品を言っても、他の商品をどんどん売り込んでくる。最初は日本語がわからない様でいながら、商談が進むとおもむろに日本語で話し出す業者も。また、生産量や技術の話になると「没問題(メイ・ウェンティー)」(大丈夫、大丈夫)という言葉も聞こえてくる。何でも「大丈夫」この言葉にはご用心なのである。
 中国側企業からは、とにかく売り込みたい、商談をうまく進めたいという熱意が強く感じられ、1社で日本側数社に売り込む場面も。
 良い技術、素材もあるが、詳しい値段交渉にはいると、各社思ったよりも値段が高いのに頭を悩ます場面も見受けられた。
 墓石を求めて参加した企業に聞いてみた。
 「石材サンプルをいろいろと見たが、墓石にふさわしい商品はない。商品レベルは普通。ただ、輸送コストを含めると国内から仕入れるのとコスト的には変わらなくなる。」
 厳しく、且つ悲喜こもごもの商談会風景であった。


○吉林省・延辺朝鮮族自治州にて
 吉林省の東部に位置し、北側は黒龍江省、東側はロシア・北朝鮮などに囲まれ、日本海までの距離は15㎞、ロシアポシェット港までは4㎞の地点にある。
 自治州の人口は約220万人、人口約37万人の延吉市がその州都である。朝鮮自治区ということで、約半分が朝鮮族、町並みはハングル文字があふれている。若者はファッション、遊びに敏感で、韓国で流行したものは次の日にはすぐに取り入れられているほど。遊びの主流はカラオケだそうである。
 街を歩いてみて、横断歩道はあるものの、ほとんど関係なく道路を横切る姿を多く見かける。道路の真ん中でわたりきれず立っている女性や老人も多いのには、少々驚いた。
 試しに渡ってみたが、車はほとんど止まってくれず、冷や汗をかきながら渡った。
 それととにかくクラクションの音がうるさい。歩行者がいつ勝手に渡るか分らないので、常にクラクションを鳴らしているそうである。
 ガイドに聞くと「事故は少ないですよ」といい、「勇気のある人が優先ですよ」と言う。
 それでも最近では交通ルールの徹底が図られてきているという。以前に比べて比較的ルールが守られるようになったらしい。それでもヒヤヒヤする場面は結構多い。交通事故は少ないと言うが…。
 自転車と人並みはどこでも多く、それを避けながら乗用車やバスが走っている。自転車に乗るコツは赤信号の際、ペダルに足をおいたまま限りなく停止することだという。車や人をうまく避けて通勤する技術は自転車族にも要求されているようである。


▽延吉市商談会の風景
 ここでの商談会も盛況で、現地から25社ほど参加。商談後直接企業を訪問する県内企業も。その中の1社に聞いた。「従業員90人くらいで生産能力は十分あり、大丈夫、大丈夫。是非取引をお願いしたいと言うことで、工場を見に行った。タクシーで1時間近く走って工場についたら、そこにいたのは3名ほどの従業員。愕然とした」やはりメイ・ウェインティ(大丈夫)には充分気を付けないと。

◎ミッション参加を終えて
 昔ながらの町並みが残り、豊富な資源を抱える東北部、渋滞を巻き起こすほどの乗用車と立ち並ぶ高層ビルの北京。都市部と農村部の格差は大きいものの、行き交う人々や街並、州政府の考え、現地企業の熱気にこれからも勢いを増す中国の一端が垣間見られた。
 年内WTO加盟が確実となった人口13億人の大国中国。行政レベルでの交流からどんどん進んで経済でのつながりが強くなれば、本当の交流が芽生えてくるのではないだろうか。
 今後の環日本海交流の進展に期待をもち、また是非訪れたい気持ちで一杯である。
 最後にこのミッションに参加した企業の方々、全ての段取りをされた県経済政策課貿易班の方々、秋田銀行の赤川氏、現地で大変お世話になった県大連事務所の塚本氏、陳氏、それと参加させてくれた中央会に、この場をお借りて感謝の気持ちを申し上げたい。


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