鹿児島県の高齢化率は21.6%で全国平均と比べると約5ポイントも高くなっている。平成12年4月には介護保険制度が導入されたが、在宅介護を行うには既存の住環境では障害が多く、しかも身体状況に合った改修が求められる。このバリヤフリー化は経営環境の厳しい中小建築業者にとって大手メーカーとの差別化の武器になることが考えられた。現理事長は早くからこの点に気付き、医療、福祉・介護の勉強を始め、経験、ノウハウを蓄積していた。しかし、一企業だけでは急増する鹿児島県内のニーズに応えられないため、平成9年12月に研究会を発足させた。さらに、介護保険導入に合わせ平成11年8月、研究会を母体に協同組合を設立した。
組合設立後は行政、福祉団体、地域住民に対して福祉住宅の広報活動のため、講演会、勉強会を開催しており、外部からの講演依頼、講師派遣依頼にもできる限り対応している。組合内の勉強会も活発で二ヶ月に一度は開催しており、高齢者の身体状況、介護人の状況も考慮した増改築の提案ができるよう「住環境福祉コーディネータ」の資格取得を促している。また、当組合理事長は平成10年4月に勉強、体験、実践の場として全国唯一の体験型福祉住宅を建築して、一般に開放されており、ノウハウの公開も行っているため行政、福祉団体からの視察も多い。組合も勉強、実践の場として利用しておりシンボル的な存在となっている。
介護保険の導入後、増改築が増加しており、行政、福祉団体とヘルパー研修などで連携が進んでいる。「福祉住環境コーディネータ」の有資格者も40名に増加した。これは、地域密着型中小建築業者が新しい生存領域(福祉住宅)を見つけたモデルケースである。協同組合組織にすることにより、行政、福祉団体、ケアマネージャーなどからも信頼され頼られる存在となった。将来的には、同様な組合を各県毎に立ち上げ、全国ネットワークの構築を目標としている。そのためのノウハウ提供には前向きであり、他県での設立が期待される。
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