この人・この企業
Vol.5
 今回は、秋田市通町商店街の有志で、町おこしのために新しい祭りを企画した「招福狐の行列実行委員会」の委員長である(株)勝月の片谷社長にご登場願いました。

「古来の伝承を再現、
     新しい祭りを創作し町おこしを」


株式会社 勝 月
代表取締役 片谷 信一 氏

■■■はじめに、今回の「招福狐の行列」を計画した経緯を教えて下さい。

 以前から商店街の仲間が集まれば、町のシンボルとなるような祭りができないかという話が出ていたものの、具体的な計画までには至りませんでした。たまたま、昨年秋、町内にある招福稲荷神社を改修した際に仲間から「神社にちなんだ祭りを企画しないか」との話が持ち上がったのが発端です。
 稲荷神社は一般的に「初午」に祭りを行っていますが、その「初午」は旧暦で定めますので2月から3月になります。秋田では冬という天候の悪い時期でもあり、祭りをするには相応しくない。それで神社の歴史や伝説を調べてみると、我が神社は東京都北区の王子稲荷神社の分霊です。本家では「大晦日の晩に関東中の狐が集まり、衣装をまとって神社に参拝した」との伝説があり、5年程前から大晦日に古来の伝承を再現し「狐の行列」を実施していることがわかりました。
 これをヒントに仲間がストーリーを発案しました。

■■■ストーリーを教えて下さい。

「招福稲荷の狐が大晦日の王子稲荷の参拝をするために、山の幸、海の幸、畑作物、果実など、その年の秋に収穫された山海の珍味を持って旅に出る。羽州街道を招福狐が通ると村々の稲荷狐が見送り、その狐火は遠くの里から見えたと言われる。また、招福狐はその年々、王子への行列の道筋を変えて、その村々の繁栄と村人の長寿を祈念して通ったと言われる。」というのが主なストーリーです。このストーリーに基づき、10月26日(土)に招福稲荷神社を出発します。

■■■行列の内容を教えて下さい。

 行列は、神狐を筆頭に供狐、命婦(高級女官)、裃狐からなる神事行列と、子狐、祭狐、色もの狐からなる神事行列の二列で構成します。今回は、地域住民が楽しめる祭りということで町内の参加者55名程度で行うことにしております。
 当日は、神事を済ませた後、午後5時頃神社を出発し、通町の歩道を一周して再び神社に戻るというルートですが、途中で町内が変わる度に「交換の儀」と称し、通行の許可を求める口上と提灯の引き渡しを行います。
 また、裃等は紙で作成したりと手作りなため、全員の準備が大変なことから、秋田公立美術工芸短期大学の学生の協力を得て、狐のペインティングをしてもらう事にしております。

■■■この「招福狐の行列」を町おこしの一環として位置づけておりますが、今後の活動について教えて下さい。

 この企画の根幹には、町内の核である神社を地域住民の心の拠り所として再度認識してもらい、自分の住む町に愛着を持ってもらいたいという願いがあります。今回の事業費も商店街の篤志家が「ちょっとむかしの通町」という本の印刷費を出してくれて、その本の販売代金を事業費に充てています。また、忙しい中、裃の作成に協力してくれる有志の気持ちで祭りが実現しました。その思いが今回の祭りで地域住民に伝わればと思います。その意味で今回は地域住民の参加だけですが、来年からは町外からも広く参加者を募集する予定です。
 さらに今後に向けては、出来れば「狐の嫁入り」も実施できるように祭りの企画自体もパワーアップを図って行きたいと考えています。いずれ、住民が他の町内に誇れる祭りになってくれればと期待しています。


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