2004年版 中小企業白書のポイント〈その1〉


 政府は、4月27日、「2004年版中小企業白書」を閣議決定し、同日、国会に提出し了承されました。
 同白書は、中小企業基本法に基づいて政府が国会に提出するものであり、今回で41回目を数えます。
 2004年版の白書は、2部構成となっており、第1部では、「平成15年度の中小企業の景気動向」として景気持ち直しの動きの中での中小企業の業況を分析しています。
 また、第2部では、「中小企業を巡る新しい動き」として、(1)新しい価値を創造する、多様な中小企業 (2)グローバリゼーションの中での中小企業 (3)高齢社会と中小企業 (4)中小企業の再生、新分野進出を支える金融など新たな動きを分析しています。
 本誌では、今月と来月の2回に亘り「2004年版中小企業白書」のポイントについてお知らせします。

[2004年版 中小企業白書の特色]

第1部 景気持ち直しの動きの中での中小企業の業況を分析

第2部
中小企業を巡る新しい動きを分析
<I> 新しい価値を創造する、多様な中小企業
・高齢社会、環境問題等に対応したニューサービス
・まちおこし等の公益サービスを「事業感覚」を取り入れつつ、きめ細やかに提供する地域貢献型事業(コミュニティ・ビジネス)
・多様なライフスタイル実現を可能とするSOHO等の、中小企業が経済社会にもたらす新しい動きを分析
<II> グローバリゼーションの中での中小企業
 中小企業の海外進出活動について、その成功の条件を探るとともに、進出工場と国内工場の分業等の状況をみることにより、国内における中小企業の活路を模索
<III> 高齢社会と中小企業
 経営者の世代交代の実態を調査し、世代交代による企業行動の変化を明らかにするとともに、円滑な世代交代の条件を分析。また、廃業(引退)した事業者に追跡調査を行い、廃業時やその後の状況等を明らかにするとともに、円滑な廃業と再起の課題を解明
<IV> 中小企業の再生、新分野進出を支える金融
 再生、新分野進出等の試みを行う企業について、資金調達、財務改善等の課題の分析

<第1部>平成15年度の中小企業の景気動向
1 中小企業の景気動向

○一昨年の春以降、景気は持ち直しの動きを見せているが、中小企業は大企業に比べて、回復に遅れが見られる。
○中小企業の中でも、製造業と比べ、非製造業で回復に遅れが見られる。

第1-1図 中小企業の業況判断DIの推移
資料:中小企業庁・中小企業総合事業団「中小企業景況調査」
(注) 業況判断DI(季節調整済前期比)=「好転」−「悪化」

2 中小企業の金融環境

○中小企業の資金繰りや借入難易度は最悪期は脱したものの、今後の動向については、引き続き注視が必要

3 中小企業の倒産動向

○中小企業の倒産件数は昨年の水準から15%減少し、16,000件を下回った。

第1-2図 倒産件数と負債総額の推移
資料:(株)東京商工リサーチ「全国企業倒産白書」、最高裁判所事務総局「司法統計年報」
(注)1. 倒産件数は負債金額1,000万円以上のものを集計。中小企業とは、資本金1億円未満の法人及び個人企業を指す。
(注)2. 法人企業の破産新受事件数は2002年が最新データ

<第2部>中小企業を巡る新しい動き
(1)ニューサービスと中小企業
○ 多様な中小企業は、近年の経済停滞にもかかわらず、健康、環境等に関連するニューサービスを次々と創出。新しい豊かなライフスタイルを実現
○ ニューサービスを生みだすのはほとんどが中小企業であるが、市場の成長に伴い、大企業が参入してくる。
○ ニューサービス市場の成立要因には、高齢化、健康意識の高まり、IT技術の普及、国民の嗜好の変化等があり、中小企業はそれをすばやく捕らえている。
○ IT革命、高齢化、環境問題に係るサービス業が増加する一方、かってのリーディングインダストリーが衰退する等サービス産業化の方向で産業構造が転換

第2-1図 ニューサービス市場への参加者の推移(参入時と現在)
〜中小企業によってニューサービス市場が形成され、しだいに大企業が参入してくる〜
資料:(株)日本アプライドリサーチ研究所「新しいビジネスの創出に関する実態調査」(2004年1月)
(注)市場に最も早く参入した事業者について、その競合先を集計している。

(2)技術革新と中小企業
○経済発展の源泉としての技術進歩においても、中小企業が高い貢献
○現在531社(2003年3月)と増加しつつある大学発ベンチャーは、その技術革新性の高さから事業化の困難性が高いことが特徴であり、事業化という「出口」を意識した効果的な支援が求められる。

(3)中小企業の新しい連携
○高い技術進歩の背景として、特徴ある企業同士の様々なネットワークによる、新製品・サービスの開発を目指す中小企業群の台頭が存在
○中小企業が新しい製品開発などで成功するためには、技術面だけを重視するのではなく、具体的な顧客イメージを持って取り組むことが要件

第2-2図 販売先に事前確保と新製品開発・改良の成果
〜事前に販路確保をしている中小企業は開発成果が高くなる〜
第1-1図 中小企業の景況感の推移〜年央以降頭打ち〜
資料:中小企業庁「企業経営実態調査」(2003年12月)
(注) 過去5年間において新製品開発を行ったことのある中小企業のうち、新製品開発の成果があった企業の割合を示す。

(4) ライフスタイルの多様化とSOHO
○SOHO(スモールオフィス・ホームオフィス)は、個人のライフスタイルを多様化する就業形態として特に注目される。その開業動機は、専業で事業を営む者と副業で営む者で大きな差


第2-3図 SOHO事業者の開業の動機
〜専業では「自由に仕事がしたかった」が、
 副業では「収入を増やしたかった」が最も多い〜
資料:(財)中小企業総合研究機構「SOHO事業者のワークスタイルに関する実態調査」(2004年1月)

(5)公益サービスの新しい提供スタイル-地域貢献型事業
○地域住民が主体となり社会貢献性の高い事業(介護サービス、子育て支援、まちおこし等)を営む地域貢献型事業(いわゆるコミュニティ・ビジネス)は、地域内での住民の交流促進・生きがい創出等、様々な面で大きな効果をもたらす。

(6)女性や高齢者の就業の受け皿となる中小企業
○中小企業は、育児や出産に伴い有業者率が大きく落ち込む30歳代の女性や、育児後に仕事に復帰する40歳代以降の女性、60歳を超える高齢者などの、通常、雇用の機会を得ることが困難な者の就労の大きな受け皿となる。
○外部人材の活用は中小企業にとって有効な戦略。企業等のOB人材が、会計士や診断士等では補いきれない販売・マーケティングや生産管理といった分野で活躍

第2-4図 外部人材とOB人材の活用分野(複数回答)
〜従来の外部人材では補えない分野でOB人材が活躍〜
資料:日本商工会議所・企業等OB人材マッチング全国協議会「外部人材の自社経営への活用に関するニーズ調査」(2003年6月)
(注)1. それぞれ、OB人材を含む外部人材を利用している企業及びOB人材を利用している企業を100とした時の割合。
(注)2. 複数回答のため合計は100を超える。

(7)来街者を増やす魅力ある商店街
○「まちづくり」のためのタウンマネジメント事業には、「イベント等ソフト事業の実施による取組」、「魅力ある商業地域への取組」等ソフト事業が重要。
○「まちづくり」のためのTMOには、「経営基盤の確立」、「継続的な事業」の他、「専門能力を発揮できる人材の確保」が必要

第2-5図 タウンマネジメント事業の取組状況について
〜「イベント等ソフト事業の実施による取組」等ソフト事業が重要〜
第1-1図 中小企業の景況感の推移〜年央以降頭打ち〜
資料:(株)ソフトクリエイション「TMOの活動実態に関する調査」(2003年2月)
(注) 複数回答であるが合計が100となるように補正

<次号に続く>

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