年頭所感

中小企業庁長官
望月晴文

 平成17年の新春を迎え、謹んでお慶びを申し上げます。
 まず、昨年発生した多くの台風や豪雨、地震によってお亡くなりになられた方々の御冥福をお祈りするとともに、被災された方々に御見舞いを申し上げます。中小企業庁としましては、早期復興に向け特別相談窓口の設置や、中小企業者に対する融資枠・保証枠の拡大等の支援策を講じるなど、対策に万全を期しているところであります。
 さて、昨年の景気を振り返りますと、全体としては回復の動きが継続してはいるものの、一部の地域・業種及び中小企業の景況については弱い動きがみられるなど、中小企業者にとってはまだまだ厳しい一年でありました。
 新年を迎え、景気の先行きは未だ不透明ではありますが、我が国経済は長きに亘る停滞を脱しつつあり、新たな未来に向けて飛躍すべき時を迎えております。そのため政府としましては、昨年取りまとめました「新産業創造戦略」に基づき、日本独自の伝統や技術といった強みを生かした「ものづくり」支援や、我が国経済の基盤となる「ひとづくり」支援を具体化することで、我が国経済がさらに発展を遂げることができるよう全力で取り組んでまいるところであります。中小企業庁としましても、我が国経済活力の源泉たる中小企業の皆様に新たな展望を切り開いていただけるよう、創業や新事業への挑戦支援、中小企業の人材育成とその活用、中小企業の金融・再生支援、商店街・中心市街地活性化支援を4つの柱として中小企業政策に全力を尽くしてまいります。
 以下、新年に当たり、今後の中小企業政策の基本方針について所感を述べさせていただきます。
まず第一の柱は、創業や中小企業の新事業への挑戦支援です。
私は長官就任以来、中小企業政策を国民にとって使いやすくわかりやすい一体的な体系として構築するため、施策の骨太化に取り組んでまいりました。具体的には、創業や経営革新等に取り組む中小企業を支援する三つの法律、すなわち、経営革新法・中小創造法・新事業創出促進法を統合強化して、「中小企業新事業活動促進法(仮称)」とし、中小企業の皆様にとってわかりやすく、かつ総合的な法律に改めるとともに、技術開発から販路開拓まで一貫した支援を行ってまいります。
近年の中小企業を巡る環境は、海外からの安価な製品の大量流入や系列関係の崩壊といった要因により、中小企業には自ら新たな市場を開拓する能力が求められるようになってきました。新たな環境に対応するため、異分野の中小企業等が技術・ノウハウの「すり合わせ」を通じて強みを相互補完することにより、様々な要求に対応できる体制を整え、高付加価値の製品・サービスを創出する、新たな連携が不可欠となっております。このような取組により市場に挑戦する中小企業者の方々を力強く支援することで、我が国経済の活性化を実現してまいります。
 第二の柱は中小企業の人材育成とその活用です。創業や中小企業の経営革新等を図るには、経営戦略の構築やマーケティング等を行う人材が重要です。そのため、まず創業予定者に対して起業・独立に向けた意識喚起を行うとともに、第二創業塾や創業セミナーのさらなる拡充によって、創業や第二創業のための実践的能力の習得を支援してまいります。また、新事業に挑戦する中小企業に対して専門的にアドバイスできる人材の育成や質の向上を図るとともに、企業OBなど経営戦略・マーケティング等の専門能力を有する人材を活用できる環境を整備してまいります。
 次は第三の柱である中小企業金融・再生支援策です。将来可能性のある中小企業が破綻に追い込まれる事態を回避するため、引き続き金融セーフティネット対策に万全を期してまいります。
 また、中小企業金融の円滑化・多様化を図るため、中小企業金融の機能強化を進めてまいります。昨年7月に民間金融機関等の中小企業への無担保融資を促すため、中小公庫が証券化支援業務を開始しているところでありますが、今後とも、政府系金融機関による融資制度に担保・保証を免除する制度を幅広く導入するなどにより、担保・保証人に過度に依存した融資からの脱却をさらに推進してまいります。
 次に、中小企業の再生支援です。現在、全都道府県に設置されております中小企業再生支援協議会を軸に、地域金融機関等の地域の関係者の総力を結集して中小企業の再生を支援しております。この結果、再生計画策定対象案件は300件を越え、約2万人の雇用を確保しております。今後、さらに増加すると見込まれる中小企業の再生計画策定支援に対するニーズに的確に対応するため、外部専門家の拡充など、体制の強化を図ってまいります。
 また、こうした地域中小企業の再生への取組を財務面から強力に後押しするため、再生支援協議会を軸として中小企業基盤整備機構の出資を活用した「地域再生ファンド」の組成を各地で進めております。
 最後の柱は商店街・中心市街地活性化対策です。近年、消費者の選別や商業集積間の競争などにより、商店街や中心市街地を巡る経営環境がさらに厳しさを増しております。中小企業庁としましては、まちづくりと一体となった先進的取組を行う地域に対して、関係省庁とも連携を図りつつハード面・ソフト面から一体的な支援を行うなど、中小商業活性化対策の重点投入を図ってまいります。
 最後に、本年が中小企業の皆様にとって大きな発展をもたらす一年になることを祈念いたしまして、私の新年の御挨拶とさせていただきます。

平成17年 元旦



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