2005年版 中小企業白書のポイント<その1>

 4月26日、「2005年版中小企業白書」が閣議決定されました。今回の白書は、第1部において、非製造業や小規模企業を中心に弱い動きが見られる中小企業の業況を分析し、第2部及び第3部において、人口減少等の社会と経済の構造変化の中での中小企業の活力を分析しています。本誌では、今月号と来月号の2回に亘り「2005年版中小企業白書」のポイントについてお知らせします。
 詳しくは、中小企業庁のHP(http://www.chusho.meti.go.jp/hakusyo/index.html)をご覧下さい。

2005年版中小企業白書の構成と特色

第1部
非製造業や小規模企業を中心に弱い動きが見られる中小企業の業況を分析

第2部・第3部
人口減少等の社会と経済の構造変化の中での中小企業の活力を分析

I マーケットの変化と中小企業の経営革新
・グローバル化、内外の人口動態等を背景に海外市場の重要性が上昇
・下請けの減少、ヒット商品の短寿命化等で販路開拓の重要性が上昇
・独自性を活かした研究開発、ブランド力強化等の高付加価値化が課題
等の、経営者のリーダーシップの発揮による経営革新に向けた課題を分析

II 中小企業の経営革新等を支える金融
 金融環境の変化の中で進展するリレーションシップバンキングの円滑化に向けた課題を分析。不動産担保に頼らない融資、市場型間接金融等の中小企業の資金調達手段の多様化の状況を分析し、併せて、自己資本比率向上の方途を探る。

III 中小企業と地域再生のあり方
 地方で人口減少が本格化する中で、地域再生に向けコンパクトなまちづくりが重要な課題。中心市街地と商業集積の活性化の課題について内外比較を含め分析。併せて、地域中小企業再生支援協議会の活動状況等を分析。

IV 日本社会の構造変化と中小企業の活力
 人口減少社会の到来等の社会の変化の中で、労働力人口の下支えの観点からの高齢者と女性の活用、若年者の雇用状況の改善等が重要課題。少子化対策の観点からは、女性の就業と出産・育児の両立等が重要。これら社会的要請に沿う形で、中小企業にはSOHO等の自営業を含め多様な就業機会を提供することが期待されることを分析。雇用創出や生産性向上に重要な開業率が低下する背景等について、就業行動との関連で分析し、中小企業が日本社会の活力の源泉として機能する上での課題を明らかにする。

<第1部>

1 中小企業の景気動向

(1) 中小企業の景気動向
○中小企業の景況には、非製造業や小規模企業を中心に、弱い動きが見られる。
○輸出主導の回復局面であることを反映して、中小製造業の出荷は輸出向けが強く、国内向けは弱い。
第1-1図 中小企業の業況判断DIの推移(季節調整済前期比)
資料:中小企業基盤整備機構「中小企業景況調査」
(注)業況判断DI=前期に比べて「好転した」企業の割合−前期に比べて「悪化した」企業の割合

(2) 中小企業の倒産動向
○中小企業の倒産件数は、91年以来の低水準
第1-2図 中小企業の倒産件数の推移
資料:(株)東京商工リサーチ「全国企業倒産白書」
(注)ここでは、資本金1億円未満の法人及び個人企業を中小企業とする

<第2部>

1 経済構造の変化と中小企業の経営革新

(1) 海外製品との競合と相手国
○グローバル化の進展に伴い、多くの中小製造業が海外製品との競合を意識
○海外製品と競合している中小製造業は約5割、うち7割は中国製品
第2-1図 海外製品との競合と競合相手国(1999〜2004年)
資料:(社)中小企業研究所「製造業販売活動実態調査」(2004年11月)
(注)
1.1999年頃と比べて、海外製品との競合の増加について尋ねている
2.従業員数300名以下の企業のみ集計している

(2) 今後の世界各地域の市場成長性
○人口動態等の違いから、今後我が国以外の東アジア諸国等が成長市場の中心になると見込まれる。
第2-2図 自動車業界に見る今後の市場成長性(地域別自動車販売構成比推移)
資料:FOURIN「世界自動車月報」NO.233(1)
(注)北米・西欧・アジア・大洋州のみを抜粋して掲載している

(3) 事業・商品の短命化
○消費構造の変化等により売れ筋商品の短命化が進展。こうした中、業種・業態の転換を含め10年前と主力事業・主力商品の変更を行った企業が約5割に上る
第2-3図 10年間の主力事業の内容変化
資料:中小企業金融公庫「経営環境実態調査」(2004年11月)
(注)主力事業とは、「売上高に占める割合が最も高いサービス・製商品を提供する事業」のことを指す

(4) 大企業と中小企業の新たな関係
○下請構造の変化等により、新たな中小企業の連携等が進展
第2-4図 大企業と中小企業の新たな関係
資料:中小企業庁作成

(5) 効果的な経営革新活動
○広く普及している取組も成長に効果があるが、「新規性の高い経営革新」は、より大きな成果をもたらす。
○特に、中小企業が各々の「強み」を持ち寄り、不足する経営資源を相互補完する連携活動は、平均的な経営革新活動よりも効果が大きい。
第2-5図 事業連携による経営革新の効果(経営利益)
資料:中小企業金融公庫「経営環境実態調査」(2004年11月)
(注)
1.製造業のみ集計している
2.1998年以降に経営革新に取り組んだ企業の経営利益額が増加傾向の割合を比較している
3.取引関係の無い異業者の中には「自治体・官公庁」、「デザイナー等の各種専門家」、「取引関係の無い異業者」を含んでいる

(6) 自社ブランドの活用
○「自社ブランド」の活用は、中小企業にとって、価格競争の回避、売上増加等の効果をもたらしている。
○小規模企業でも約4割が「自社ブランド」を持っており、その価値を高めることが課題。

2 多様な資金調達手段のあり方

(1) 中小企業向け貸付
○中小企業の借入依存度が高い一方で、中小企業向けの貸出残高は、伸び悩みを示している。この中で、政府系中小企業金融機関の貸出残高は一定で推移
○中小企業向け貸出と地価の関係に変化の兆しがある。
○定性面を重視するリレーションシップ・バンキングが進展。これに応じて、中小企業から金融機関に、信頼性の高い計算書類や代表者の資質、技術力といった情報等を提供することが肝要
第2-6図 中小企業向け貸出残高の推移(業態別)
資料:日本銀行「金融経済統計月報」他より中小企業庁調べ
(注)
1.国内銀行は、信金・信組を除く国内銀行銀行勘定、国内銀行信託勘定、海外店勘定の合計
2.政府系中小企業金融機関とは、商工組合中央金庫、中小企業金融公庫、国民生活金融公庫を指す

第2-7図 中小企業向け貸出しの審査項目として3年前より特に重視するようになった点
資料:(社)中小企業総合研究所「中小企業向け貸出における実態調査」(2005年1月)
(注)
1.複数回答のため、合計は100を越える
2.各項目に関して、3年前と比較して「重要度が増えた」と答えた金融機関の割合
3.ここでいう金融機関とは銀行・信用金庫・信用組合を指す

<次号に続く>



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