年頭所感

中小企業庁長官
望月 晴文

 平成18年の新春を迎え、謹んでお慶びを申し上げます。
 昨年を振り返りますと、我が国経済は緩やかな回復を続け、また、中小企業の景況についても、業種や地域によって差は見られるものの、全体としては一進一退の中からようやく改善の兆しが見られた一年でした。しかしながら、長引く原油価格の高騰により多くの中小企業が収益に影響を受けるなど、懸念材料も依然として見られ、中小企業者にとっては楽観を許さない状況が続いております。
 このような状況の中、足下の景気回復を確固たるものとし、将来にわたって日本経済が活力を持ち続けられるようにするためには、我が国企業の太宗を占め、経済活力の源泉である中小企業の活性化が極めて重要であります。中小企業庁としましては、中小企業の皆様に、その持てる力を存分に発揮し、新たな展望を切り拓いていただけるよう、各般の施策を講じてまいります。特に、我が国製造業の競争力の源泉であるモノ作り中小企業への支援や、新事業や事業再生に取り組む中小企業への支援に加え、人材の確保や育成支援、円滑かつ多様な資金供給の確保、さらには、喫緊の課題である商店街振興・中心市街地活性化を五つの柱として、中小企業政策に全力を尽くしてまいります。
 以下、新春を迎えるに当たり、本年の中小企業政策の基本方針について所感を述べさせていただきます。
 まず、第一の柱が、我が国の製造業を支える高度な技術を持ったモノ作り中小企業の支援です。すなわち、燃料電池や情報家電などの先端的産業分野を始め、現在及び将来において我が国を牽引していく重要産業分野が、今後とも競争力を発揮して世界に伍して戦っていくためには、鋳造や鍛造、プレス加工など、モノ作りの基盤となる技術を担う中小企業の競争力の維持や強化が不可欠であります。このため、これらの中小企業を強力に支援するための新法を制定し、技術毎の技術開発指針の作成、川上と川下企業間での情報共有の促進、さらには研究開発への支援など、様々な支援策を展開してまいります。
 第二の柱は、新事業展開や事業再生に取り組む中小企業への支援です。
 昨年4月、創業や経営革新等に取り組む中小企業への支援施策の骨太化を図り、さらに、異なる分野の中小企業が技術・ノウハウを持ち寄り連携して行う新たな事業活動(「新連携」)を支援するための、「中小企業新事業活動促進法」が成立しました。本法律に基づき、昨年全国9ヵ所に「新連携支援地域戦略会議」が設立されるなど、支援体制が着実に整備されておりますが、本年も引き続き、本会議を効果的に活用し、事業計画の策定段階から市場化に至るまで一貫した支援を行うことにより、中小企業の新事業展開を後押ししてまいります。
 また、中小企業の再生支援につきましても、全都道府県に設置されております中小企業再生支援協議会を中心として、地域金融機関等の地域の関係者の総力を結集して中小企業の再生を支援してまいります。
 第三の柱は、中小企業の人材確保と育成の支援です。
 創業や中小企業の経営革新を実現するためには、経営戦略の構築やマーケティング等を行う人材が不可欠です。このため、これらの専門能力を有する企業OB等の人材と中小企業とのマッチングを行うほか、創業のための実践的能力の習得を支援するため、創業塾や創業セミナーを更に充実してまいります。
 また、中小企業に不足しがちな若い人材の確保を支援するため、ジョブカフェ等を活用して中小企業の魅力を発信する場を設けるほか、高専等と連携し、地元企業のニーズに即した技術教育を支援します。
 次は第四の柱である中小企業金融対策です。
 昨年は、政府系中小企業金融機関の改革が政府の最重要課題の一つとなり、11月に改革の基本方針がとりまとめられました。今後は本方針を具体化する作業を進めてまいりますが、中小企業庁としましては、中小企業の方々が不安を感ずることのないように、改革をしてむしろよかったと思っていただけるよう、しっかりと取り組んでまいります。
 本年も、やる気と能力を有する中小企業が資金繰りに支障を来して破綻に追い込まれる事態を回避するため、セーフティネット貸付・保証や資金繰り円滑化借換保証制度等により、引き続きセーフティネット対策に万全を期してまいります。
 また、担保や個人保証に過度に依存しない融資を促進するため、売掛債権を担保とした借入や、中小企業向け貸出債権の証券化支援業務を推進するほか、担保の全部又は一部を不要とする制度や、経営者の個人保証を免除する制度を幅広く導入し、中小企業金融の円滑化・多様化を推進してまいります。
 最後の柱は、商店街・中心市街地活性化対策です。近年、まちの郊外化や小売業の低迷など、商店街や中心市街地を巡る環境は更に厳しさを増し、中心市街地の活性化は喫緊の課題となっております。コンパクトでにぎわいあふれるまちづくりを実現するため、中心市街地活性化法等を改正し、都市機能全般の市街地への集約と中心市街地のにぎわい回復に一体的に取り組む地域に対し、選択と集中により重点的な支援を行ってまいります。
 以上の五つを柱として、本年も我が国中小企業の発展のため、中小企業政策に全力を尽くしてまいる所存であります。
 最後に、本年が中小企業の皆様にとって大きな飛躍の年となるよう祈念いたしまして、私からの新年の御挨拶とさせていただきます。

平成18年 元旦



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