平成18年度 中小企業関係税制改正の概要

 平成17年12月16日付けで経済産業省中小企業庁から同省関係の平成18年度の中小企業関係税制改正が発表されましたので、その概要をお知らせします。

 同族会社の留保金課税制度の抜本的見直し
【法人税】
 同族会社の留保金課税について、対象となる法人を同族関係者1グループで株式等50%超保有の会社のみに限定し、残る同族性の高い対象法人についても、内部留保に対する控除額を大幅に引き上げることにより、平均並の配当を行えば課税されなくなる抜本改正を行い、中小企業に不可欠な内部留保の充実を図る。
【改正の概要】
◆対象法人
現 行:同族関係者3グループで株式等50%超保有
改正後:同族関係者1グループで株式等50%超保有

 役員給与の損金算入のあり方の見直し
【法人税】
 従来損金算入が認められていなかった臨時給与について、あらかじめの定めがあれば損金算入を認めることとする一方、実質一人会社(低所得の会社等を除く)について、節税目的の法人成りを抑制する観点から損金算入方法を適正化する。
【改正の概要】
(1)いわゆる定期定額要件の緩和
現行:一月以内の期間を単位として、定期的に同一の額を支給する役員給与を損金算入
改正後:あらかじめの定めに基づいて確定時期に確定額を支給する役員給与を損金算入(年2回のボーナス等)
(2)実質一人会社の社長報酬の損金算入に係る適正化
現行:個人事業者が法人形態をとれば、オーナー社長報酬につき、法人段階で損金算入、個人段階で給与所得控除が利用可能(「経費の二重控除」)。新会社法で最低資本金要件等が撤廃、節税目的の法人成りが容易化
改正後:実質一人会社のオーナー社長報酬につき、給与所得控除相当分を、法人段階で損金不算入とする。

 中小企業投資促進税制の拡充・延長
【法人税、所得税、住民税】
 中小企業の思い切った設備投資を可能とし、生産性の一層の向上を実現するため、ソフトウェアを対象に追加するなどの拡充を行った上で中小企業投資促進税制を延長する。
【改正の概要】
 次の拡充を行った上で、2年間延長(税額控除7%、特別償却30%)
1. ソフトウェアを対象に追加
2. 器具・備品の対象品目の拡充
 従来からの対象品目である電子計算機に加え、デジタル複合機を追加

 中小企業者等の少額減価償却資産特例の延長
【法人税、所得税】
 中小企業の事務負担を軽減するとともに、小規模企業を中心に設備投資を促進する効果を有する30万円未満の少額減価償却資産の損金算入特例の延長を行う。
【改正の概要】
 平成15年度改正で創設された少額減価償却資産の損金算入特例(資本金1億円以下の中小企業者等が30万円未満の減価償却資産を取得した場合、全額損金算入(即時償却)を認める制度)について、特例の適用対象となる損金算入額の上限を年間300万円とした上で、2年間延長する。

 産業競争力のための情報基盤強化税制の創設
【法人税、所得税、住民税、事業税】
 情報セキュリティを確保しつつ競争力を強化するための新税制を創設する。中小企業については、その実態に応じた投資をサポートすべく、年間投資額要件を低く設定するとともに、リースの適用を認めることとする。
【改正の概要】
 情報セキュリティ強化と国際競争力強化の観点から、高度な情報セキュリティが確保された情報システム投資を促進し、情報基盤を強化するための税制上の措置を講ずる。
 税額控除(10%)又は特別償却(50%)の選択適用

 創業5年以内の中小企業者に対する欠損金の繰戻し還付措置の延長
【法人税】
 事業基盤が脆弱な創業間もない中小・ベンチャー企業の資金繰り難を緩和するため、欠損金の繰戻し還付措置を延長する。
【改正の概要】
 欠損金の繰戻し還付措置は平成4年度から適用停止中であるが、創業5年以内の中小企業に適用される1年間の繰戻し還付措置を2年間延長する。
※欠損金の繰越期間は7年間(恒久措置)

 中小企業の事業承継の円滑化に資する税制の整備(物納手続の改善)
【相続税】
 キャッシュに乏しい中小企業の事業承継の円滑化のため、自社株式の物納に係る許可基準を緩和するなど手続を改善する。
【改正の概要】
○物納許可基準の緩和・明確化
・これまで不明確だった物納不適格財産を法令で限定・明確化。取引相場のない株式については譲渡制限株式のみが物納不適格とされ、それ以外の株式の物納は、業績等を問わずに認める。
○物納手続の迅速化・明確化
・物納許可に係る審査期間(原則3ヶ月以内)の法定
・物納手続に必要な書類の明確化及び提出期限の法定 等
○その他納税者の利便の向上等
・延納中に延納困難となった場合に物納を認める制度の創設 等

 交際費の損金算入の特例の延長及び課税の範囲の明確化
【法人税】
 中小企業の事業活動を円滑化するため、交際費について、中小企業に限って認められている損金算入の特例措置を延長するとともに、課税の範囲の明確化を行う。
【改正の概要】
(1)損金算入の特例の延長
 資本金1億円以下の企業に限って認められている交際費の損金算入特例を2年間延長する。
(2)交際費の課税上の範囲の明確化
 交際費の範囲については、政令や通達等で定められているが、会議費等の隣接費用との区分が不明確であることから、隣接費用としての計上を税務署に否認される事例も多く、従来よりその解釈や運用をめぐり様々な議論が存在。中小企業の事業の円滑化のため、課税の範囲の明確化を行う。

 中小企業技術基盤強化税制(税額控除割合上乗せ措置)の見直し・強化
【法人税、所得税、住民税】
 我が国経済の活性化に向け、中小企業がその機動性・独創性を活かして取り組む研究開発への積極的な取組を支援するため、中小企業技術基盤強化税制の恒久的措置に加え、研究開発投資の増加額について、控除率の優遇を講じる。
【改正の概要】
1. 中小企業技術基盤強化税制(恒久的措置)
 試験研究費総額の12%を税額から控除する。
2. 試験研究費の増加額に係る税額控除制度(2年間の措置)
  上記恒久的措置に、増加型の税額控除制度を統合し、増加額に対して追加的に5%を税額控除。なお、比較試験研究費は、直近の3事業年度の試験研究費の平均。また、直近2事業年度よりも当年の試験研究費が多いことが条件。
→1. 及び2. の結果、増加分に対して合計17%の税額控除となる。

10 その他の中小企業関係税制
(1)適格退職年金制度から特定退職金共済制度への年金資産の非課税移換措置
(2)中心市街地活性化法改正に伴う所要の税制措置
【相続税】
(3)特定の事業用資産の買換の場合の課税の特例措置の延長
【法人税・所得税】
(4)中小企業等協同組合法改正に伴う所要の措置
【法人税、所得税等】

※詳しくは、経済産業省中小企業庁のホームページをご覧下さい。
http://www.chusho.meti.go.jp/zaimu/zeisei/download/051216_18fyzeisei_gaiyou.pdf



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