2006年版 中小企業白書のポイント<その1>

 4月28日、「2006年版中小企業白書」が閣議決定され、公表されました。本誌では、今月号と来月号の2回に亘り、中小企業白書のポイントについてお知らせします。なお、詳細は次の中小企業庁のホームページをご覧下さい。
HP(http://www.chusho.meti.go.jp/pamflet/hakusyo/060428hakusyo.html

2006年版中小企業白書の全体概要

第1部《景況分析》
 業種や地域によって「ばらつき」を見せつつも、緩やかに改善を続けた2005年度の中小企業の業況などを分析。

第2部・第3部《テーマ分析》
 目下の景況は改善傾向にあるものの、より大きな視野に転じると、現在、我が国社会・経済には、次の2つの大規模な構造変化が起こりつつある。
(1)90年代以降急速に進みつつある東アジア経済圏の一体化
(2)急速な少子高齢化による明治以来の人口トレンドの逆転
 そこで、第2部では、「東アジア経済との関係深化と中小企業の経営環境変化」をテーマに、また、第3部では、「少子高齢化・人口減少社会における中小企業」をテーマに、この中における中小企業の現状と対応の方向性、将来に向けた役割を分析。

<第1部>2005年度における中小企業の動向

1.中小企業の景気動向

○我が国の景気が回復する中で、中小企業の景況も改善しているものの、大企業に比べ遅れが見られる。
図1-1 規模別・業種別業況判断DIの推移

○地域別には東北・中国・四国地方、業種別には建設業・小売業等の非製造業が伸び悩むなどのばらつきが見られ、依然注視が必要。
図1-2 中小企業の地域別業況判断DIの推移

2.3つの過剰(債務・設備・雇用)と中小企業
■「3つの過剰」については、緩やかながら克服されつつある。

(1) 債務(資金調達)
○中小企業の財務体質は大企業より脆弱ながら改善の動きが見られる。
図1-3 中小企業の自己資本比率の推移

○これまで、設備投資を手持ち資金の範囲に手控える「我慢の経営」が続いてきており、貸出残高も減少を続けてきた。
図1-4 中小企業向け貸出残高の推移

(2) 設備
○中小企業においても足許の設備投資には増加が見られる。
図1-5 中小企業の設備投資動向の推移

(3) 雇用
○中小企業における雇用過剰感は解消しつつある。
図1-6 雇用人員DIの推移

○倒産件数も減少傾向。
図1-7 中小企業の倒産件数の推移

3.開廃業の動向

○開業率は上向きに転じる一方、廃業率も増加し、その差は拡大している。
図1-8 開業率、廃業率の推移(企業数ベース)

<第2部>テーマ分析(1)
東アジア経済との関係深化と中小企業の経営環境変化

1.中小企業の国際展開の現状と課題

○中小製造業のアジア進出は増加傾向。1997年のアジア通貨危機で一時落ち込んだが、2001年以降は中国向けが特に急増。
図2-1 中小製造業のアジア現地法人数

○東アジア進出の目的が、進出時と現在では、単なるコストダウンや取引先への追随から市場開拓へと変化している。
図2-2 東アジア進出の目的(進出時と現在の比較)

2.国際分業の進展の下で我が国産業を支える基盤技術

○電気・情報通信機械器具を中心に「投資の国内回帰」が起こっている。自動車分野は海外投資が旺盛。
○東アジアに対する技術優位性は保たれているが、東アジア製品の国内市場流入による競合は激しさを増している。
図2-3 東アジア企業に対する技術力と東アジア製品の国内市場流入による競合状況

3.産業の国際化による経営環境の変化と地域産業集積

○20年前は集積近郊企業との取引において集積のメリットが発揮されていたが、現在では、「分業による少量、多品種、短納期の発注への高い対応力」や「質の高い情報の入手・交換」を企業はメリットとして感じており、集積自体の機能が変容している。
図2-4 集積地域事業環境の優位性の差異

○集積メリット①:新しい取組のアイデアを見つける情報の入手のしやすさ
→集積内で得られる情報を活用している企業は収益が好調。集積内では新市場や技術開発の情報を入手している中小企業が多い。
○集積メリット②:企業連携の相手先の見つけやすさ
→企業連携を行っている企業は収益が好調。集積をすると、連携の相手先を見つけやすい。
図2-5 集積内で入手する情報

図2-6 新連携の相手先

<次号に続く>


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