年頭所感 中小企業庁 長官 石毛 博行 |
平成十九年の新春を迎え、謹んでお慶びを申し上げます。
昨年を振り返りますと、我が国経済は総じて見れば、民需に支えられ安定した景気回復を続けた一年となりました。しかし、地域、業種、企業規模により回復にばらつきが見られ、いまだ厳しい状況にある中小企業も少なくありません。また、中長期的には人口の減少、国際競争の激化など、構造的に対応が迫られる課題を抱えております。 そこで、政府といたしましては、このような状況の下、我が国が安定した経済成長を実現していくことを目的として、昨年、「経済成長戦略大綱」を取りまとめました。中小企業は地域活性化の中心的役割を担い、我が国経済の国際競争力を支える存在であるとの認識の下、この「大綱」に基づき、中小企業の活性化に全力で取り組んでまいるところです。中小企業庁としましても、地域中小企業の活性化を図る「地域の応援」、中小企業の発展、事業再生を支援する「企業の応援」、起業・再起業を促進する「ヒトの応援」の三つの応援を同時に推進してまいります。 以下、新春を迎えるに当たり、本年の中小企業政策の基本方針について所感を述べさせていただきます。 まず、第一の柱である「地域の応援」としまして、地域資源を活用した中小企業の新事業展開を支援してまいります。 地域活性化のためには、従来のように公共事業に依存するのではなく、自立的な発展ができる産業群の育成が必要となっています。そこで、地域の中小企業の手によって、地域の「強み」となる、産地の技術、農林水産品、観光資源などといった地域資源を掘り起こし、新たな商品・サービスに発展させる取組を総合的に支援します。 具体的には、「中小企業地域資源活用プログラム」を創設し、マーケティング、ブランド戦略に精通した人材・仕掛人の提供や、産官学連携、農工商連携など従来の垣根を越えた地域の力の結集、さらに大都市部、海外の市場を視野に入れた取組への支援を行ってまいります。そのため、法律、予算、政府系金融機関の低利融資や設備投資減税といった各般の施策を総動員し、関係省とも連携しつつ取り組んでいるところです。 また、コンパクトでにぎわいあふれるまちづくりを実現するため、昨年、改正されました中心市街地活性化法等に基づき、中心市街地活性化協議会を中核として、中小小売商業者等の意欲的な取組を支援してまいります。 第二の柱は、中小企業の発展、事業再生を支援する「企業の応援」であります。 昨年、高度な基盤技術を有するモノ作り中小企業の発展を支援するため、「中小ものづくり高度化法」を施行いたしました。本法律に基づき、昨年八月に、金型、鋳造、めっきなどを合わせた全技術分野で、三百九十九件の研究開発計画の認定を行いました。認定を受けた研究開発計画について、研究開発支援である「戦略的基盤技術高度化支援事業」など、様々な支援策が着実に進められております。今後とも、今年度の執行状況や中小企業のニーズ等を踏まえ、制度の充実を図ってまいります。 また、中小企業の事業再生の施策としまして、全都道府県に設置されております中小企業再生支援協議会を軸に、地域金融機関等の地域の関係者の総力を結集して中小企業の再生を支援しております。現在までに約一万件の相談があり、一千件以上の再生計画が実行に移され、約七万五千人の雇用を確保しております。このような中小企業の再生計画策定支援に対するニーズに対応するため、今後も再生計画策定支援の体制強化を図ってまいります。 さらに、中小企業の資金供給円滑化のために、第三者保証や不動産に過度に依存しない融資制度の確立を目指します。具体的には、中小企業の保有する資産のうち、動産や売掛債権を担保として利用する「流動資産担保融資制度」を推進してまいります。既に、五年ほど前に開始した売掛債権を担保とする融資については、融資額の累計は一兆円となっており、更なる制度の拡大を進めてまいります。動産担保につきましても、信用保証協会の保証制度を通じて、積極的な活用を促してまいります。 また、政府系金融機関改革につきましては、昨年に「政策金融改革に係る制度設計」が取りまとめられました。現在、法案策定に向けて具体的な手続を進めているところですが、制度設計にもある通り、中小企業向け金融機能の根幹が維持されるよう、しっかりと取り組んでまいります。 加えて、中小企業の経済活動の活性化のためには税制の役割も極めて重要であることから、中小企業の内部留保の充実を図るため、中小同族会社に対する留保金課税の撤廃を行うとともに、計画的な事業承継を支援するため、相続時精算課税制度の自社株式特例の創設や種類株式の評価方法の明確化を行います。事業承継に関しては、これらの措置に加え、その円滑化を支援するための枠組みと非上場株式等の税制措置について総合的に検討するほか、実務家間の支援ネットワークを構築するなど、総合的支援策を講じてまいります。 第三の柱は、起業・再起業を促す「ヒトの応援」です。すなわち、企業を新しく起こす、あるいは一度失敗した人が再チャレンジすることを支援してまいります。 具体的には、まず、中小企業者の早期の事業転換や再挑戦を支援する相談窓口を全国二百八十カ所に設置いたします。次に、一度失敗している起業家が門前払いされず融資を受けられるように、政府系金融機関による再挑戦支援融資制度を創設します。また、民間金融機関による再挑戦者への融資を後押しするため、再挑戦支援保証制度を設けます。さらに、個人保証に過度に依存しないよう、第三者保証を求めない保証制度の拡充・徹底や、定期的な財務報告を行うことなどを条件として本人保証を免除する融資制度の創設・拡充を行ってまいります。 以上の三つを柱として、本年も我が国中小企業の発展のため、中小企業政策に全力を尽くしてまいる所存であります。 最後に、本年が中小企業の皆様にとって大きな飛躍の年となるよう祈念いたしまして、私からの新年の御挨拶とさせていただきます。 平成十九年 元旦
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