平成19年度 中小企業関係税制改正のポイント

 平成18年12月14日付けで経済産業省中小企業庁から同省関係の平成19年度の中小企業関係税制改正が発表されましたので、その中から主なポイントについてお知らせ致します。

I 中小企業の経営基盤の強化

 中小同族会社に対する留保金課税制度の撤廃
【法人税】
  発展を目指す中小企業にとっては、設備投資・研究開発等を行うための資金の確保や信用力向上等を図るために利益の内部留保が必要不可欠であり、留保金課税は中小企業の発展の阻害要因。このため、中小企業を留保金課税の適用対象から除外する。
【改正の概要】
【現 行】
・特定同族会社(同族関係者1グループで株式等50%超となる会社)が内部留保した金額に対して追加的に課税。
・平成18年度税制改正において、対象法人を限定した上で、内部留保に対する控除額を大幅に引き上げること等により、平均並の配当を行えば課税されなくなる抜本改正が行われた。
【改正後】
・資本金1億円以下の中小企業は留保金課税の適用対象から除外する。

 中小企業地域資源活用促進法(仮称)に基づく税制措置
【法人税、所得税】
 地域の強みを活かした中小企業の事業活動を促進するため、中小企業地域資源活用促進法(仮称)に基づき、特色のある産地技術、農林水産品、観光資源等の地域資源を活用して、新たな商品・サービスの開発・提供を行う中小企業に対し、事業の立ち上げ・拡大に向けた設備投資を支援する税制措置を創設する。
【改正の概要】
地域資源を活用した新商品・新サービスを開発・提供するための設備投資に対する税制措置の創設(7%の税額控除又は30%の特別償却)。

 減価償却制度の抜本的見直し
【法人税、所得税、住民税、事業税】
 減価償却制度について、企業の国際競争力・我が国経済の成長力を強化するため、償却に要する年数を諸外国(欧米・韓国等)に劣らないものとする抜本的な見直しを行う。
【改正の概要】
1. 今後新規に取得する設備について、現行の法定年数経過時点の「残存価額」を撤廃(10%→0%)し、法定年数経過時点で全額(100%)まで償却可能な制度とする。
2. 「償却可能限度額」(取得価額の95%)を撤廃する。

 中小企業等基盤強化税制の延長
【法人税、所得税】
 中小小売業者等の経営基盤の強化を通じ、中小小売業等の高度化・高付加価値化を図るため、中小企業等基盤強化税制を延長する。
【改正の概要】
【現 行】
 中小卸・小売・特定のサービス業者の取得する機械・装置及び器具・備品について、特別償却(初年度30%)又は税制控除(7%)を講じている。
 また、中小企業新事業活動促進法に係る要件(経営革新等)を満たした企業の取得する機械・装置についても、同様の措置を講じている。
【改正後】
 適用期限を2年間延長(平成21年3月31日迄)。

II 中小企業の事業承継の円滑化

 相続時精算課税制度の拡充
【相続税、贈与税】
 早期の計画的な事業承継を促進する観点から、現行の相続時精算課税制度では対象とならない60歳以上の中小オーナー経営者が、後継者である子供(代表者となる場合等に限る)に自社株式を贈与する場合の特例を創設する。
【改正の概要】
〔贈与時〕
・申告を前提に、65歳以上の親から20歳以上の子への贈与につき、2,500万円の非課税枠(限度額まで複数回使用可)これを超える部分については税率一律20%で課税
◇特定非上場株式贈与特例の創設
 中小オーナー経営者が、自社株式を後継者である子供(代表者となる場合等に限る)に贈与する場合、贈与者の年齢要件を60歳に引き下げ、非課税枠を3,000万円に引き上げる。
〔相続時〕
・贈与時の時価で贈与財産を相続財産と合算して相続税額を計算し、精算する。

III 中小企業へのその他の支援

 特殊支配同族会社の役員給与の損金算入制限措置の見直し
【法人税】
 平成18年度税制改正において、個人で事業を行っている者の節税目的の法人設立を抑制する観点から、実質一人会社(特殊支配同族会社)の役員給与について、損金算入制限措置が導入された。中小零細企業への配慮から適用除外措置も設けられたが、中小企業の活性化の観点から、適用除外基準を大幅に引き上げ、従前の2倍の1,600万円にする等の見直しを行う。
【改正の概要】
【現 行】
<対象法人>
 同族関係者1グループで株式等90%以上を保有、かつ、常務に従事する役員のうち同族関係者が過半数。
<損金算入制限措置>
 オーナー役員(業務主宰役員)給与につき、個人段階で利用可能な給与所得控除相当分だけ法人段階で損金不算入。
<適用除外>
1. 基準所得(課税所得+オーナー役員給与)800万円以下。
2. 基準所得(課税所得+オーナー役員給与)が3,000万円以下、かつ、オーナー役員給与が基準所得の1/2以下。
【改正後】
 前掲適用除外2.の基準所得800万円以下を、1,600万円以下に引き上げ(平成19年度から)。

 中小企業金融の円滑化
(1)商工中金に係る政策金融改革に伴う所要の税制措置
【登録免許税、事業税等】
【改正の概要】
 商工中金の株式会社への移行時に係る登記に関する登録免許税の非課税措置を講ずるとともに、新商工中金の移行期間中、新商工中金を利用する中小企業者が設定する抵当権の設定登記等に係る登録免許税の軽減措置と商工中金に対する事業税(資本割)の軽減措置等を講ずる。

(2)商工中金及び信用保証協会の抵当権設定登記の軽減措置の延長
【登録免許税】
【改正の概要】
 商工中金、信用保証協会に抵当権設定の登記等に伴う登録免許税の軽減措置の適用期限を、商工中金については、1.5年延長(20年9月末まで)、信用保証協会については、2年間延長。

 中小企業組合への支援
(1)事業協同組合等の留保所得に関する特別控除制度の延長
【法人税】
【改正の概要】
 事業協同組合等の各事業年度における留保所得について、32%相当額の損金算入を認めている特別控除制度を2年間延長する。

(2)中小企業等の貸倒引当金に関する特例措置の延長
【法人税】
【改正の概要】
 事業協同組合等が行う貸倒引当金の繰入れについて、通常の繰入限度額の16%分を割り増して損金算入を認めている特例措置を2年間延長する。

(3)保険会社等の異常危険準備金に関する特例措置の延長
【法人税】
【改正の概要】
 火災共済協同組合等が異常危険準備金を積み立てる場合、正味収入共済掛金の5%(通常は2.5%)まで損金算入を認めている特例措置を3年間延長する。

(4)事業協同組合等が行う共済事業の生命保険料控除制度等の適用対象への追加
【所得税、法人税、相続税】
【改正の概要】
 法律改正により、事業協同組合等における共済事業の健全性を確保するための措置が導入されたことから、事業協同組合等が大規模に行う共済事業を生命保険料控除制度等の対象とする。

※詳しくは、経済産業省中小企業庁のホームページをご覧下さい。
http://www.chusho.meti.go.jp/zaimu/zeisei/download/h19_zeisei.pdf



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