『事業承継ガイドライン』について
〜円滑な事業承継のための手引き〜 |
中小企業庁では、今日本の中小企業にとって大きな問題となっている事業承継対策に関して、平成17年10月に関係士業団体や中小企業関係団体とともに、「事業承継協議会」を設立し、中小企業の事業承継円滑化に向けた総合的な検討を行ってきました。そして同協議会は、平成18年6月にその手引きとなる『事業承継ガイドライン』を策定し公表いたしました。次に、『事業承継ガイドライン』の概要をご紹介します。
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I 事業承継対策の大切さ
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・ 日本経済を支える中小企業では、近年、経営者の高齢化が進行する一方で(図表1)、後継者が既に決まっている企業は全体の約4割にとどまり、特に親族内での後継者の確保はますます困難になっている(図表2)。
・ 事業承継に失敗して相続紛争が生じたり、業績が悪化するケースも多く存在。
・ 我が国経済にとって中小企業の事業承継円滑化は喫緊の課題。
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図表1 資本金規模別の代表者の平均年齢の推移
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図表2 先代経営者との関係の変化
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II 中小企業の事業承継に潜む問題点
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・ 中小企業の多くを占める同族会社では、決定権者であり仲裁者でもあるオーナー経営者の死とともに、親族内での争いが激化するケースが珍しくない。
・ 事業承継問題は、経営者にとって遠い将来の話と思われがちなことや、周りの者が言い出しにくいこともあり、事前の取組が十分進んでいない(図表3)。
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図表3 承継のための先代経営者の取組内容
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III 事業承継計画の必要性
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・ 事業承継は、いつかは必ず訪れる問題。事前準備の取組を行う程成功する確立が高くなるという結果も出ている(図表4)。円滑な事業承継のためには、十分時間をかけた計画の立案と着実な対策の実行が重要。
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図表4 承継前の先代経営者の取組と承継が成功した企業の割合
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IV 事業承継を円滑に進めるためのステップ
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1 承継方法の決定と計画の立案(ステップ(1))
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〔現状の把握〕
会社をとりまく各状況の認識。
(1) 会社の経営資源の状況(従業員、資産やキャッシュフローの現状と見込み)
(2) 会社の経営リスクの状況(負債や会社の競争力の現状と見込み)
(3) 経営者自身の状況(保有株式、個人名義の土地・建物、負債、個人保証の状況)
(4) 後継者候補の状況(親族内や社内に後継者候補がいるか、各後継者候補の能力・適性、年齢・経歴・会社経営に対する意欲)
(5) 相続発生時に予想される問題点(法廷相続人及び相互の人間関係・株式保有状況等の確認、相続財産の特定・相続税額の試算・納税方法の検討) 〔承継の方法と後継者の確定〕
関係者との意思疎通を行い、各承継方法のメリット・デメリットを把握した上で、承継方法と後継者を確定。
〔事業承継計画の作成〕
後継者と協力して、以下の手順で事業承継計画を作成。
(1) 経営理念の共有化(経営に対する価値観・信条等の明文化、社内への浸透)
(2) 中長期の経営計画の作成(会社の現状の詳細な分析、中長期的な方向性(経営ビジョン)の決定、売上高・利益等の数値目標設定)
(3) 事業承継の具体的な時期の検討
(4) 円滑な事業承継に向けた課題の整理
(5) 中長期の経営計画に、事業承継の時期、課題の解決策を盛り込んだ「事業承継計画」の作成
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2 承継方法ごとの具体的な対策の実行(ステップ(2))
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(1)親族内承継
◆特 徴
親族内承継は、近年比率は低下しているものの、全体の6割を占めており、依然として事業承継の中心的位置を占めている(前出図表2)。 【メリット】
・一般的に内外の関係者から心情的に受け入れられやすい。
・一般的に後継者を早期に決定し、長期の準備期間を確保できる。
・他の方法と比べて、所有と経営の分離を回避できる可能性が高い。 【デメリット】
・親族内に、経営能力と意欲がある者がいるとは限らない。
・相続人が複数いる場合の、後継者の決定・経営権の集中の困難性。
◆主なポイント
◇関係者の理解
・後継者候補が複数いる場合は、意思疎通を行い、なるべく早期に後継者を決定。
・社内や取引先・金融機関に対して、事業承継計画の公表を行っておくことが有効。
・将来の役員陣の構成を視野に入れて、役員・従業員の世代交代を準備。
◇後継者教育
・経営に必要な能力・知識を習得するために、社内・社外での教育を実施。
◇株式・財産等の分配
・株式・財産等の分配においては、(1)後継者への株式等事業用資産の集中、(2)後継者以外の相続人への配慮、という2つの観点からの検討が必要。
・現時点で既に株式が分散している場合には、可能な限り買取り等を実施。 ◇後継者への生前贈与
・生前贈与は、後継者への財産移転の方法のうち、権利が確定されるため最も確実。
・遺留分等民法上の問題については、十分注意することが必要。
・税務面では、暦年課税制度と相続時精算課税制度による税負担を比較し、どちらの制度が有利であるかを判断。
◇遺言の活用
・遺言を作成することで、後継者に株式等事業用資産を集中することが可能。ただし、遺言はいつでも撤回できるため生前贈与ほど後継者の権利が確実でないことに加え、遺留分の問題や遺言の有効性をめぐるトラブルが起こることもある。
・各種遺言の中でも、公正証書遺言が自筆証書遺言に比べて有効。
・確実に遺言内容が実行されるという観点では、遺言信託の活用も選択肢の一つ。
◇会社法の活用
・これ以上株式を分散させないために、譲渡制限規定を置くことが必要。
・「会社法」で活用の幅が拡大されている議決権制限株式、拒否権付種類株式(黄金株)、相続人に対する売渡請求等の活用も有効。
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(2)従業員等への承継・外部から後継者を雇い入れる場合
◆特 徴
親族外承継(全体の4割)のうちの多くを占めると考えられる従業員等への承継では、後継者の株式買取資金や、個人保証等が障害となる。 [1] 従業員等への承継のパターン
共同創業者、専務等番頭格の役員、優秀な若手経営陣、工場長等の従業員、等が後継者候補。将来のオーナー経営者の子息等への中継ぎとして、一時的に従業員へ承継されることもある。 [2] 外部からの雇い入れのパターン
取引先の企業や金融機関から後継者を招く場合が多い。 【メリット】
・親族内に後継者に適任な者がいない場合でも、会社の内外から広く候補者を求めることができる。
・従業員に承継する場合は、経営の一体性を保ちやすい。
【デメリット】
・親族内承継と比べて、関係者から心情的に受け入れられにくい場合がある。
・後継候補者に株式取得等の資金力が無い場合が多い。
・個人債務保証の引き継ぎ等の問題。
◆主なポイント
◇関係者の理解・後継者教育
・基本的には親族内承継の場合と同様だが、関係者の理解により多くの時間がかかる可能性もあるため、注意が必要。
・現オーナー経営者の親族や中継ぎ的な経営者の意向は特に確認しておくべき。
◇株式・財産等の分配
・後継者には、現オーナー経営者が保有する株式を買い取る資力がないことが多いが、後継者の経営に配慮し、一定程度の株式を後継者に集中すべき。
・現オーナー経営者の要請に応じて、前出の会社法の各種手法が活用可能。
・後継者に株式買取資金がない場合でも、MBOが利用できる場合がある。
◇個人保証・担保の処理
・現オーナー経営者の個人保証について、後継者も連帯保証人に加わることを求められる場合がある。
・現経営者は、事業承継に向けて債務の圧縮に努めるとともに、金融機関との交渉や、後継者の負担に見合った報酬の確保の措置等の配慮が必要。
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(3)M&Aを検討する場合
◆特 徴
M&Aとは、合併(Merger)と買収(Acquisition)を意味する言葉。近年では、中小企業におけるM&Aの件数は増加している(図表5)
【メリット】
・身近に後継者に適任な者がいない場合でも、広く候補者を外部に求めることができる。
・現オーナー経営者が会社売却の利益を獲得できる。
【デメリット】
・希望の条件(従業員の雇用、価格等)を満たす買い手を見つけるのが困難。
・経営の一体性を保つのが困難。
◆主なポイント
◇M&Aの手続と注意点
・手続の流れは概ね以下のとおり。
・M&Aの検討段階においては、社内・社外に対する秘密保持が重要。一方、買い手企業に対しては、自社に都合の悪いことでも「隠し事をしない」ことが大切。
◇会社の実力の「磨きあげ」
・「売れる」会社とするためには、会社の実力の「磨きあげ」が重要。
・現時点で会社を売却した場合の価格の目安を試算し、企業価値を向上するための指標とすることが有効。
〔会社の実力の「磨き上げ」を行う際のポイント〕
・業績の改善・伸長、無駄な経費支出の削減
・貸借対照表のスリム化、オーナーと企業との線引きの明確化
・セールスポイントとなる会社の「強み」を作る。
・無形資産の重要性(優良な顧客、ブランド価値やイメージ等) |
V おわりに
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・中小企業にとって、円滑な事業承継が非常に重要。
・事業承継対策には様々な手法があるが、準備に期間を要するため、すぐにでも事業承継計画策定に向けた検討を開始すべき。
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『事業承継ガイドライン20問20答』
http://www.chusho.meti.go.jp/zaimu/shoukei/shoukei20/index.htm |
※この記事は、事業承継協議会が平成18年6月に作成した「事業承継ガイドライン(要約版)」から抜粋しております。詳しくは、次のホームページをご参照下さい。
事業承継協議会ホームページ http://jcbshp.com/ |
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Copyright 2007 秋田県中小企業団体中央会 http://www.chuokai-akita.jp/
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